災害支援、流通、建築…ドローンが生活豊かに
ドローンタイムズ■JUIDA・鈴木真二理事長に聞く
無人で空を飛ぶドローン(無人航空機)に寄せられる期待が、技術の進歩に比例するように、日増しに高まっている。活躍の場は、趣味から産業用に拡大し、空撮、防災、測量、物流から、さらに広がる勢いだ。適切な運行のためのルール作りも進む。ドローンの健全な発展を支援する一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA=ジュイダ)の鈴木真二理事長に、現在の取り組みや今後の展望を聞いた。(田中亘)
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--JUIDAの主な取り組みは
「自分は航空宇宙工学で飛行中に故障が起きても墜落しない『落ちない飛行機』の研究をしている。ドローンは無人なので、より安全への配慮が求められる。JUIDAは2年前に幅広い情報収集や意見交換のために設立したが、ドローンは2年ほど前から業務で空撮に使われ始めており、利用の拡大が見込まれていた。ルールがないと安全な利用も難しく、参入を思いとどまる恐れがある。それでは健全な発展が阻害される。安全のガイドライン作りの必要性を感じ、その制定が設立時の主な活動だった」
--4月、首相官邸に落下しているのが見つかった
「あれで国のルール整備に対する意識が高まった。その結果、航空法を改正することになるのだが、ベースとなる議論はJUIDA内で行われていたので、短時間で改正することに貢献できたと思う」
--ドローンはどんな発展をたどるだろうか
「生活が豊かになるように使われて発展するだろう。災害時には状況把握や物資の運搬。買い物難民を支援する可能性もある。それ以外にも流通、建設、農業、科学とそれぞれで生活を豊かにし、産業を発展させる可能性を持つ」
--ドローンの発展はどんな文化をもたらすだろうか
「『空を飛びたい』という人類共通の夢を、ドローンが自分の分身としてかなえてくれる。そこから撮影された画像や動画は、自分の空からの視界のはずだ。また、部屋の中からそのまま外の映像に切り替わるなど、CGでしか作れなかった映像が実写で作れる。そうした、これまでできなかったことが、できるようになることが、新しい文化を感じさせる」
--ドローンはもっと国民の身近になるだろうか
「そう思う。高校生にドローンの話をすると目を輝かせる。そういう若い人の中から、21世紀のライト兄弟のような人が出てきてくれるとうれしい。若い人にはもっと空に興味を持ってもらい、新しい空の文化を作ってほしいと思っている」
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■一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)
ドローンをはじめとする無人航空機システム(UAS)について、民生分野での活用を推進し、新産業を創造することを通じ、健全な発展に寄与することを目的に、2014年7月に設立された。活動内容は国内外の情報収集と提供、研究開発支援、各種セミナー、研究会の企画・開催、操縦者養成、環境整備など多岐にわたる。会員数は504会員(16年7月15日現在)で国内最大。
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【プロフィル】鈴木真二
すずき・しんじ 1979年、東大大学院工学系研究科修士課程修了。豊田中央研究所を経て、工学博士取得後、東大助教授、96年から東大大学院教授。2014年、JUIDAを設立し、理事長に就任。航空イノベーション総括寄付講座代表、東京大学広報室長も務める。元日本航空宇宙学会会長、国際航空科学連盟(ICAS)理事。岐阜県出身。62歳。
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