遊技産業の視点 Weekly View

 □ホールマーケティングコンサルタント、LOGOSプロジェクト上級研究員・岸本正一

 ■時間軸で捉えた「遊びやすさ」提供を

 パチンコ遊技における時間あたりの消費金額を抑制しようとする昨今の動きは、行き過ぎた射幸性が多くのファン喪失を招いたとの反省から、その効果が期待されるところである。しかしながら、筆者はファン喪失のもう一つの大きな原因は別の部分にあるとみている。それは「長時間遊技の常態化」である。

 現在のパチンコは、30分や1時間という「時間つぶし」としての娯楽の適性を欠いている。射幸性を追い求めたが故に、(最終的な)大量出玉獲得を優先して開発された多くの遊技機は、長時間遊技してこそ、その迫力や面白さを堪能できる仕組みとなっている。これは、行政が掲げた「時間消費型」というレジャーの性質を強調した弊害ともいえるだろう。

 一方、スマホのスケジュール管理機能がいくら進歩したからといって、世の中から「時間つぶし」に対するニーズが減少することはない。むしろ、合理的な時間管理をすればするほど、持て余す時間が増えている可能性すらある。本来なら、このような「時間つぶし」へのニーズをパチンコが引き受けることができたはず。それができなかったために、消費者は漫画喫茶・インターネットカフェ、あるいはセルフ式コーヒーショップなどにその場を求めている。

 そこで提言したいのは、潜在的短時間プレーヤーの再発掘作業だ。30分や1時間の「時間つぶし」に最適な遊技機を開発し、短時間で手軽に誰もが遊ぶことのできるパチンココーナーを1通路でもよいから設置していく。マーケティングという観点からは、この取り組みに業界で統一したネーミングを行い、一般に訴求していくことも必要だろう。

 パチンコホールは「長距離客狙いのタクシー」を目指してはいけない。ワンメーターの乗車客からも安心して利用してもらうことが、利用者増加の第一歩だ。そう考えたとき、業界にはまだまだ改善できる余地が多く残っている。まずは、大衆娯楽への回帰実現のためにも、消費金額の抑制のみならず、短時間遊技への適応を期待したい。

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【プロフィル】岸本正一

 きしもと・しょういち 1963年生まれ。元SEの経験を生かし、遊技場の集客メカニズムを論理的に整理・研究する傍ら、全国のパチンコホールを対象にコンサルティングを行う。雑誌への連載やテキストの出版、セミナーでの講演なども手掛ける。オベーション代表。