英EU離脱、個人投資家は動揺 リスク回避、金などに資金流入
欧州連合(EU)からの離脱を問う23日の英国の国民投票を受け、金融市場が動揺している。個人投資家が外国為替証拠金(FX)や外貨建て預金などの取引を手控える一方、比較的価値が下がりにくい金を裏付けにした上場投資信託(ETF)への資金流入が加速し、リスク回避が強まっている。
「先週まで活発だった円と英通貨ポンドを売買する個人投資家の取引が様子見ムードになった」。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長はこう話す。離脱、残留の観測に応じて乱高下する展開が続き値動きが荒く、大損失につながりかねないからだ。
昨年末まで1ポンド=180円前後で推移していた為替相場は、安全資産とされる円が買われたため、今月16日に一時146円前後まで円高ポンド安が進んだ。しかし今週に入り、再び1ポンド=152~153円まで戻す状況になっている。
その上、投票結果が「残留の場合は円安、離脱の場合は円高になるが、どちらに転んでも10%ほど急変動する可能性がある」(神田調査部長)ため、顧客の投資資金が証拠金の範囲内に収まらない可能性がある。
こうした流れの中で、外為どっとコムのほか、マネックス証券が取引できる金額を従来の10分の1程度に引き下げたこともあり、取引の手控えムードが高まっているという。
様子見の動きは、銀行窓口で取り扱う外貨預金や貯蓄性の高い一時払い保険などにも広がっている。円高の進行で人気だった豪ドル建て、米ドル建てなどの外貨建ての一時払い保険の販売が伸び悩む。「英国離脱の懸念で、ドル=円の為替などがさらに円高に進む可能性もあり、顧客が相場の乱高下を嫌い加入を躊躇する動きが出ている」(生命保険大手)からだ。
一方で、行き場に困った個人の投資マネーは金や「マイナス金利の恩恵を受ける不動産投資信託に向かっている」(三井住友信託銀行)。
三菱UFJ信託銀行が取り扱う現物の金を裏付けにした上場投資信託(ETF)「金の果実」の純資産残高は今月21日時点で447億円と、昨年末の405億円から1割増加した。
同行が開くセミナーには、運用に悩む個人投資家が殺到。「不安定な相場環境で安全資産としての金に注目している」「分散投資の一つとして金を検討している」といった声が聞かれるという。
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