不透明な原発再稼働、起死回生誓う関電 東ガスとの戦略的提携にみる焦燥
関西電力が、東京ガスと戦略的提携を結んだ。LNG(液化天然ガス)の調達やLNG火力発電所の運営技術などで提携し、首都圏での発電所建設などで協業することも視野に入れる。東日本大震災前、発電量に占める原発比率が他の大手電力に比べても高かった関電は、原発の再稼働に重点を置く傾向が強かった。高浜原子力発電所(福井県)3、4号機の運転を差し止める大津地裁の仮処分が決定し、電力小売り自由化がスタートしても再稼働は“封印”された。厳しい経営環境が関電の仲間づくりを後押しした。(中山玲子)
提携は深化へ
「ガスにしろ、電気にしろ、小売りの自由化が進めばますますエリアや業種の垣根を越える必要がある。1社でなんでもやるのは無理だ」
今年4月、大阪市北区の関電本店。東ガスとの提携を発表した会見した関電の津田雅彦・総合企画本部事務局長代理は、その理由をこう説明した。
関電にとってエネルギー業界大手との初の提携。具体的には、LNGの燃料調達をめぐり、互いの需要の繁忙期と閑散期などに応じて柔軟に交換・融通しあう仕組みを進めていく。また技術連携では、関電のLNG火力発電所に東ガスが技術者を派遣して運転や保守のノウハウを吸収し、東ガスが発電事業での技術を強化するという内容だ。
これら合意した提携以外にも、関電が電力販売を目指す首都圏でLNG火力発電所を共同建設したり、北米や東南アジアでの電力販売事業への共同参画も検討したりしている。将来的には協力関係を深めていく方向で、提携規模はより大きくなるとしている。
大変な危機
関電は、これまでエネルギー業界大手との提携には消極的だったが、今回は経営環境の変化が対応を迫ったといえる。
4月、家庭も電力会社を選べる電力小売り全面自由化がスタートした影響で関電の顧客流出に歯止めがかからない。独占してきた家庭用の電力販売で他の大手電力や新電力が攻勢をかけている。関西では大阪ガスが家庭向け電力販売に参入し、3月末で10万件以上の予約を獲得するなど順調な滑り出しとなるなど“草刈り場”となっている。
逆に、発電コストが比較的安い原発の再稼働で浮いた分で電気料金を値下げして関西の牙城を守り、その上で国内最大市場の首都圏に進出することを目論んでいたが、司法判断による原発再稼働の封印で首都圏進出をまだ決められないでいるのが実情だ。防戦一方の展開に対し、関電の八木誠社長は「大変な危機」と打ち明ける。
エネルギー業界では、来春にガス小売りの全面自由化を控え、電気やガスなど業種を越えた合従連衡の動きが目立っている。昨年4月には東京電力ホールディングスと中部電力が、燃料調達や火力発電事業で包括提携し、共同出資会社を設立している。
起死回生なるか
「東ガスとの提携は早く発表したかった」
ある関電幹部は、こう内情を明かす。
他の大手電力幹部は「合意した提携はわざわざ発表するレベルでもない。どこの会社も他社と同じような協力はしている」と冷静に分析する。提携発表には経営環境が厳しくなるなか、出遅れ感のあった関電が具体的な「次の一手」を打ち出したいという焦りが透けてみえた。
それでも、国内2位の電力会社と国内ガス最大手のタッグは競合他社にとって脅威に映る。
実際、経済産業省資源エネルギー庁幹部は「ガスの自由化では関電は存在感を示すはずだ」と指摘する。
ガスの年間輸入量でいえば、原発の代わりに稼働している火力発電の燃料として関電が大幅に増やした結果、今では大ガスを上回っている。東ガスとの提携は価格競争力の強化につながるというわけだ。
原発再稼働が不透明で、関電は、他の大手電力と比べて原発依存が高いだけに苦戦しているかにみえているが、遅ればせながら競争の流れに加わった格好だ。
来春にはガス小売り自由化が始まり、エネルギーの業界地図がさらに変わる可能性がある。関電と東ガスとのタッグがエネルギー業界のサバイバルでどのように効いてくるかが注目される。
関連記事