北電対抗の新電力、じわり浸透 「安さ」「クリーン」で顧客奪う
バイオマス発電所の建設が北海道苫小牧市で大詰めを迎えていた。間伐材の燃焼熱で水を水蒸気に変え、その力でタービンを回して電気をつくる仕組み。三井物産などが出資する「苫小牧バイオマス発電」(同市)の施設で、出資者でもある北海道ガスが売電先になる。
北ガスは北海道の「新電力」の中では規模が大きい。4月に家庭向け電力小売りが自由化され、電力会社以外も電気を売れるように。北ガスは北海道電力から既に2万件の顧客を奪っている。
苫小牧のバイオマス発電所は最大出力5900キロワットで、12月には稼働する予定。一般家庭1万世帯分の年間発電量が見込まれ、北ガスが躍進する鍵を握る施設になる。
北ガスの売りは「安さ」。北海道電が泊原発(北海道泊村)を再稼働させられず、電気料金を高止まりさせている中、北ガスに乗り換えた標準家庭の料金は北海道電よりも最大で年4.4%安くなる。
苫小牧市に隣接する安平町ではソフトバンクが昨年12月、国内最大級の太陽光発電施設「苫東安平ソーラーパーク」の稼働を始めた。太陽光パネルは約44万4000枚。約3万世帯分の電気を生む。
こちらの売りは安さではなく「環境への影響が少ない、クリーンさ」。発電時に何も燃やさず、当然ながら原子力にも頼らない。
料金は北海道電より月100円程度安いだけだが、顧客の数は増えているという。
北海道電は泊原発の再稼働後、電気料金を値下げする方針だが、北ガスも対抗して値下げに踏み切る構え。ソフトバンクも再稼働に反発する消費者の存在に商機を見る。
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