「地球分の一の出会い」 鈴木マグラクレン美保

講師のホンネ

 先日、私は20年ぶりの再会を果たした。お会いしたのは、学生時代、東京駅にあったアルバイト先のレストランに、毎朝立ち寄ってくださったお客さまだ。毎朝、コーヒーとチェリーデニッシュをご注文されたので、アルバイト仲間の間では「チェリーデニッシュのおばちゃん」と呼ばせていただいていた。

 私のアルバイト最後の日に、住所を交換し、それ以来、年賀状でずっとやり取りをしてきた。毎年「今年こそは会いたいです」と書きながら、なかなか会えずにいたが、ようやく実現した。

 20年ぶりということで、お互いにわかるかしらと思ったものの、心配には及ばず、会った瞬間、時を越えて、あっという間に当時に戻ったかのようだった。「茅ケ崎から東京駅に来て、あなたたちのお店でコーヒー飲んでホッとしてから、飯田橋まで出勤していたのよ。あなたたちがいてくれたから、毎日、頑張れたのよ」と当時を振り返ってうれしそうに話してくださった。

 「そんなふうに思っていてくださったんだ」と目頭が熱くなった。定年退職されて、今は趣味を楽しんでいるご様子。とってもお元気で、会えてよかったと心から感謝の気持ちでいっぱいになった。

 当時は、アルバイトの仲間たちと、わいわい楽しく働いている、ただそれだけだった気がする。自分が周りに与えている影響というのは、わからないものだ。読者の中にも、「あの時、あなたがいてくれたから乗り越えられた」「あの時のあなたのひと言に勇気をもらった」と言われ、自分は覚えていなかったという経験があるかもしれない。

 今回の再会で、改めて、日々丁寧に生きようと思った。「一期一会」に通じる、こんな英語の表現もある。

 Yesterday is history. Tomorrow is a mystery. Today is a gift. That’s why it is called the present.

 「昨日は歴史。明日は未知。今日は贈り物。だから現在(present)はプレゼント(present)といわれている」

 年度が替わり、新入社員が入社したり、所属が変わったりする4月は「出会い」の季節でもある。出会いを通して、人は成長することができる。

 地球の人口は、約73億人。73億人もの人がいる中で、出会えるというのは、相当な奇跡だと思う。今、目の前の人との出会い「地球分の一の出会い」を大切にしたい。

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【プロフィル】鈴木マグラクレン美保

 すずき・まぐらくれん・みほ 1974年静岡県生まれ。ベター・ライフ・コーチング代表。TOEIC925点。国籍を問わず、海外駐在員のためのコーチングや駐在員家族のための異文化対応研修を行う。国内外でセミナー通訳者としても活動しながら、心と心の懸け橋になる仕事を展開中。「全国・講師オーディション2014」にて奨励賞を受賞。