生態系配慮マンション脚光 付加価値向上、周辺住民も理解

 
三菱地所レジデンスが販売した「ザ・パークハウス西新宿タワー60」の完成予想図

 鳥や昆虫がすみ続けられるよう周囲の樹木を残すなど、環境や生態系への配慮を前面に掲げたマンションが注目されている。エコ・節電意識の高まりで太陽光発電を導入した物件は既に多くの業者が販売。さらに周辺環境にも優しいと訴えることで、付加価値を高めたいという狙いだ。建設時に周辺住民の理解を得やすいとの事情もある。環境に関する専門の機関から認証を受ける動きも広がっている。

 ◆「子育てにいい」

 看護師の井手上龍児さん(35)と萌翔さん(33)夫妻は昨年末、東京都国分寺市内に建設中のマンションを購入した。「駅から近くて通勤に便利なのに加えて、敷地の中に自然の緑がたくさんあるのが気に入った。2歳の子供がいるので、安心して散歩ができる。子育ての環境にとてもいい」と満足そうに話す。

 このマンションは野村不動産が販売した「プラウド国分寺」。今年11月に入居予定で、8階建て、総戸数125戸。建設地にもともとあった雑木林を多く残していることを売り物にしている。

 昨年7月、「いきもの共生事業推進協議会(ABINC)」認証を取得。2014年2月に始まった制度で、緑地面積や土壌の質、水の循環など多様な項目に基づき、生態系に与える影響が少ない施設を評価する。これまで首都圏を中心に35のマンション、ショッピングセンター、工場などが認証を受けた。

 「省エネなどの環境配慮は今のマンションでは当たり前。周囲の生態系維持にまで踏み込むことで客の心をつかむことができる」と、国分寺のマンション開発を担当した野村不動産住宅事業本部の東伸明課長は強調。「武蔵野の緑が多く残り、環境意識が高い地域だけに、ABINC認証を受けたことで周辺住民への説明もスムーズに進んだ」と振り返る。

 三菱地所レジデンスも環境に配慮したマンション開発に力を入れている。これまでにグループで、首都圏と関西、福岡市の9物件がABINC認証を取得。このうち、来年11月入居予定の「ザ・パークハウス 西新宿タワー60」は、60階建て総戸数954戸の高層マンションで、昨年2月に認証を受けた。

 敷地内に約1900平方メートルの広大な公開空地を設け、多くの樹木を配置。新宿の高層ビル群に近い立地だが、近くには新宿中央公園や神田川があり、意外に鳥や昆虫などが多いという。

 ◆植栽が生物の中継点

 「専門家に周囲の生物の生息状況を調べてもらい、生物が移動する際に、マンションの緑地が中継点になるよう植栽を工夫した」と商品企画部の岡崎新太郎業務グループ長は話す。入居予定者を対象に、NPOと協力した生き物観察ツアーも定期的に実施している。

 同社はABINC認証を受けた物件以外でも、主力ブランドの「ザ・パークハウス」のマンションについては、14年以降に設計した約50棟はすべて生物多様性に配慮した植栽などを施している。

 岡崎さんは「住宅を探しているときは、環境も含めいろいろな情報に敏感になる。自宅マンションが地域の生態系維持に役立つと訴えれば、多くの人が共感してくれる」と話し、さらに取り組みを強めていく考えだ。