巻芯回収、マングローブ植樹支援

eco最前線を聞く
昨年5月、フィリピンのネグロス島でマングローブを植樹する現地の子供たち(ニチバン提供)

 □ニチバン常務 CSR・経営統括担当 酒井寛規さん

 ニチバンは、主力製品「セロテープ」などの粘着テープを使い切った後に残る巻芯を回収して段ボールに再生。そこで得た資金でフィリピンでのマングローブ植林・維持活動を支援する「ニチバン巻芯ECOプロジェクト」を2010年度から展開している。回収した巻芯は累計160万個を超え、マングローブの植樹も11万本以上に達した。酒井寛規常務は「息の長い、地に足が着いた活動として続けていく」と力を込める。

 ◆段ボールに再利用

 --プロジェクトを立ち上げたきっかけは

 「これまでもリサイクルをはじめ環境に配慮したものづくりに取り組んできた。ただ、テープは『はられて捨てられる』運命であり、使い切れば巻芯はごみとして捨てられる。そこで、1948年に市販したセロテープが発売60年を迎えたのを機に、『環境に優しい商品』を告知するキャンペーンとして何かできないかと検討し、目を付けたのが巻芯だった。巻芯はほとんどが紙製で、段ボールに再生すれば資源の有効活用になる。回収で得た資金を植樹活動に生かせば、地球環境保全に貢献できると考えた。なぜ植林かというと、材料のセロハンが木材チップでできていることをほとんどの人は知っておらず、植樹の重要性を訴えたかった」

 --プロジェクトの成果は

 「2014年11月から15年1月まで実施した第5回の取り組みには全国の学校や企業、病院など710団体と997の個人が参加し、回収した巻芯は49万3319個と過去最多を記録した。巻芯を売って得た利益と当社からの巻芯の個数に応じた支援金は、環境NGO(非政府組織)『イカオ・アコ』に寄付し、フィリピンのネグロス島でのマングローブ植樹を支援している。第5回分は今年3月までに3ヘクタールに3万本以上を植樹、これまで植樹したマングローブの保護・維持活動にも充てられる」

 --プロジェクトの仕組みは

 「対象とする巻芯は幅20センチ、直径15センチ以内の粘着テープの紙製巻芯で、当社以外の製品も回収する。参加希望者は参加者シートに記入の上、参加者の負担で巻芯を郵送してもらう。学校などにはダイレクトメール(DM)で告知するほか、企業や医療機関などの得意先にも社員を通じて参加を呼びかけている。また、当社はJリーグのジェフユナイテッド市原・千葉、徳島ヴォルティスのオフィシャルサプライヤーであり、スポーツ用テーピングテープなどの巻芯回収でチームやファンの協力も得ている。環境教育の一環として当社のプロジェクトを活用している小学校もあり、地域の店舗などに回収ボックスを置いて何千個と回収しているケースもある」

 ◆「出前授業」を拡大

 --新たな取り組みは

 「昨年は回収に参加した小学校に当社の社員が出向き、リサイクル活動の重要性やマングローブの植樹が地球環境に果たす役割などについて児童らと一緒に考える『出前授業』を、トライアルとして3校で実施した。出前授業については今年から本格的に取り組み、十数校に広げる。これに伴い、授業内容についてもしっかりとしたコンテンツに仕上げていく。学校側からの反響もあり、確かな手応えを感じており、今後も継続して実施していく。プロジェクトを検討した当時は、10~20代にニチバンの知名度が落ちていたこともあり、プロジェクトを通じ小学生にニチバンを知ってもらうきっかけづくりになればという側面もあった。その点も含め、全国の小学校に重点を置きプロジェクトを推進していく」(鈴木伸男)

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【プロフィル】酒井寛規

 さかい・ひろのり 同志社大商卒。1985年ニチバン入社。執行役員、取締役を経て、2015年6月から現職。54歳。福井県出身。