岡村製作所(オカムラ)

加速するオフィスイノベーション
フューチャーセンター機能を備え、イノベーション文化を促進するサロン空間

 ■文化の変革 新たな価値空間を提案

 近年、事務所の改装や移転に伴い、従業員の働きやすさや企業らしさをデザインに反映するなどオフィス環境の整備に投資する企業が増えている。ライフスタイルの変化や情報通信技術(IT)の進展などで従業員のワークスタイルが変化していることも背景にあり、働く場であるオフィス環境の変革が重要視されるようになってきた。このオフィスイノベーションの動きは、今後さらに加速するとみられており、岡村製作所(オカムラ)はオフィスの新たな価値空間を積極的に提案している。

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 ◆多様なワークスタイルに対応

 「多くの人が働くことに自己実現を求めたり、自分らしく働くことを重視するようになってきている」。同社オフィス研究所の山田雄介研究員は、近年の従業員の働く意識についてこう分析する。個人の価値観(働く報酬や対価に対する考え方)が変化してきていること、またインターネットやSNSなどの普及で情報の受発信が容易にできるようになり、この結果、個人が自分にあったビジネスや働き方をしやすくなってきているのであろう。

 今までの画一的な働き方ではなく多様なワークスタイルが生まれており、オフィスの中の行動も変わってきている。そしてビジネス競争が激化する中で、企業の成長を支える従業員のパフォーマンスやモチベーションをアップするために、個人、そして組織のスタイルに適した働く仕組みや環境を提供することが企業に求められ始めている。

 社会の変化にあわせて組織にもさまざまなスタイルが登場してきている中、オフィスでの個人やチームの行動に大きな影響を与えるのが「組織文化」だ。組織文化とは、従業員の間で共有されている行動原理や思考様式のことで、つまり組織内において業務を遂行する際に重要視する行動や価値観の傾向である。

 個人やチームの行動は組織文化の結果として表れるため、「組織文化を知ることは、行動の特徴をつかみ行動に適した環境をつくる指標になるためオフィスづくりに活用できる」と山田研究員は強調する。

 米ミシガン大学のK.S.キャメロン教授とR.E.クイン教授が開発した診断ツールを使用し、組織文化を分析すると、「家族文化」「イノベーション文化」「階層文化」「マーケット文化」の4つの強弱が示され、さらに現在と将来目指したい理想の文化傾向が分かる。同社が取引先約170社について組織文化の現状を調べたところ、秩序を重んじた中で堅実に取り組みながら安定した連続性を維持していくことが特徴の「階層文化」(35%)が最多。一方で、将来目指す方向としては、和気あいあいとした中で互いに尊重しながらチームワークを維持していくことが特徴の「家族文化」(36%)がトップだった。ただ、現在から理想への増加率では、開放的な雰囲気の中でチャンスを求めて変化に対応していくことを特徴とした「イノベーション文化」が最も高かった。

 山田研究員は「新たな価値創造が求められる時代の反映。かつて製造業を中心にモノづくりでイノベーションを起こしてきた日本企業の現状への危機感の表れではないか」と話す。

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 ◆社員個々の価値観変える

 現在の文化を変革して異なる文化へ移行しようとする企業は数多く、こうした動きは今後さらに加速することが予想される。「組織文化を変えることは、そこに所属している人々の価値観を変えることで、例えばミーティングなどそこで行われる行動形式も変わる。組織文化を捉えることで、行動の特徴をつかみ、行動に適したオフィス環境を考えることによって、組織力を最大に発揮できるオフィスをつくっていくことができる」との見方を山田研究員は示す。

 同社のオフィスでも、組織文化の分析結果をもとに組織文化を促進させる機能空間をつくっている。部門内の情報共有や創作活動を行う部室のような空間を設置することで「家族文化」を促進したり、オフィスのエントランスに社内外の人たちとのつながりを生み出すフューチャーセンターの機能を持たせることで社員の自発的なチャレンジを誘発し、「イノベーション文化」を高める試みを行っている。

 これからも同社では、多様なワークスタイルを支え、新たな価値を生み出すオフィスづくりや家具の開発に注力していく。

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 ■自由な働き方サポート

 □クリエイティブファニチュア「アルトピアッツァ」

 新しい形のオフィス商品として発売したのが、クリエイティブファニチュア「Alt Piazza(アルトピアッツァ)」だ。統一されたモチーフのもとに豊富なアイテムをそろえた共有スペース向けのオフィス家具で、作業や気分に合わせて自由な働き方をサポートする。

 人が自然と集まり安らぎを感じられる空間をつくるために、テーブル天板は表面の見た目だけでなく手触りや厚みにもこだわり、ダイレクトな素材感を実現した。メラミン樹脂で表面処理したメラミン化粧板を採用し、オフィス家具としての丈夫さと汚れにくさも備えている。また、厚みのある天板をシンプルな口の字フレームに乗せたカジュアルなデザインは、これまでの重厚なオフィス家具とは異なりカフェのような居心地の良さを生み出す。

 目線の高いメインカウンターとハイチェアは、気軽に立ち寄りやすく、偶発的なコミュニケーションが期待できる。オプションの照明は暖かみのある電球色が落ち着いた空間を演出する。