スピード経営、成果主義の鴻海 シャープ実績不足なら雇用方針など見直しも?
鴻海精密工業傘下で再建を進めることになったシャープ。鴻海の豊富な資金力で競争力の巻き返しを図り、シャープの技術力と鴻海の販売力で相乗効果をもたらす考えだ。鴻海は現時点でシャープの「一体的な再生」を目指す考えを示している。ただ鴻海の郭台銘会長は徹底した成果主義、即断即決のスピード経営で知られる。期待通りの実績を上げることができなければ経営陣の刷新や事業、雇用の維持方針の見直しが検討される可能性もある。
鴻海にはシャープの企画力と設計力が魅力だ。鴻海は家電や電子機器などの組み立てという業態で世界有数の企業に成長したが、顧客企業に指定された部品を組み立てるだけでは利益率は高くない。このため傘下に加えるシャープが商品の設計を主導して最終製品を生産すれば、利益率は確実に向上する。
鴻海の視線の先にあるのは、米アップルをはじめとする世界のスマートフォンメーカーだ。鴻海は、シャープの亀山工場(三重県亀山市)のスペースを活用して有機ELの研究に取り組む。有機ELは、液晶技術を応用でき、液晶よりも薄くて色鮮やかな画像を出すことができる。アップルは2018年にも「iPhone(アイフォーン)」に搭載することを検討している。
有機ELの開発・生産で先行しているのは、サムスン電子とLG電子の韓国勢だが、シャープも有機ELの技術を天理工場に蓄積しており、鴻海の資金力があれば供給者として参入できる。量産でコストを下げれば、十分に受注可能だ。
一方、有機ELは、日本の中小型液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)や、ソニー、パナソニックの有機EL開発部門を統合した「JOLED(ジェイオーレッド)」も研究に力を入れる。JDIは18年からスマホなど向けに量産を始める計画。日本勢と鴻海傘下で外資系企業となったシャープとの激しい競争も予想される。「郭会長は合理的で成果主義」(鴻海関係者)とされ、シャープの成果の出ない事業や人員は整理されることもあり得る。
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