エキスポシティのサバイバル競争 稼げぬ店には容赦なき“撤退勧告”

 
エキスポシティの外観。中央奥がららぽーとエキスポシティ

 万博記念公園(大阪府吹田市)の遊園地エキスポランド跡地に11月開業した日本最大級の複合施設「EXPOCITY(エキスポシティ)」。併設されたミュージアムや体験型英語教育施設などは週末を中心に家族連れらで賑わい、商業施設「ららぽーとエキスポシティ」に入居する305店舗も集客を競っている。開業直後のスタートダッシュにわくが、実は裏側で入居テナント企業のサバイバルが始まっている。(大島直之)

 「関西初進出の48店舗を含め新業態、体験型もそろえた。これまでのららぽーとの要素を集めたフラッグシップになる」

 事業主の三井不動産は新しい商業施設の特徴を、こうアピールする。エキスポシティ全体の年間売上高の目標は600億円。ららぽーとブランドの商業施設の売上高規模としては、「ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉県船橋市)の平成26年度の724億円に次ぐ水準を見込む。

 年間来場者1700万人を目標にするエキスポシティの巨大な集客力を背景にするだけに、商業施設への波及効果にも期待はふくらんでいるが、生き残りをかけた激しいビジネス競争のスタートでもある。

 モールでは、事業主と入居テナントが6年契約を結んでおり、この期間が当面のサバイバルレースの対象となる。

 実際、今年開業6年のリニューアル時期を迎えたららぽーと2施設では、入居テナントを大幅に入れ替えている。新規出店と改装は「ららぽーと磐田(静岡県磐田市)」で出店数全体の約27%に相当する49店舗。「ららぽーと新三郷(埼玉県三郷市)」でも約37%に当たる66店舗が刷新されている。

 このほか大規模リニューアルに取り組む「ららぽーとTOKYO-BAY」は今年、フードコートを中心に約90店舗と出店数全体の約20%が新規出店・改装となった。25~26年の新規出店・改装も約150店に上っており、2年間で約半数のテナントに何らかの形で手が入った格好だ。

 多くの店舗が同じ場所で営業すれば、優勝劣敗がはっきり現れるのがビジネスの世界だ。これらリニューアルされた店舗数には契約満了を待たずに撤退するテナントは含まれていない。モール業界では1年間で1割程度が「撤退・入れ替わり」があるといわれ、常に厳しい生き残り競争にさらされているのだ。

 当然、モールは売り上げ拡大のため施設全体の活性化を重視するため三井不動産もモールに独自のノウハウに基づき運営している。

 特に、ららぽーとで特徴的なのが複数の競合テナントが立地する場合の店舗配置だ。ファッションであれば、さまざまな同業他社が同じフロアで並ぶのは百貨店や駅ビルの商業施設でもおなじみの風景だ。だが、一般的には旅行会社やメガネ、子供用品の業界などでは近くで営業することはあまりない。

 ところが、ららぽーとでは、そういう業種でも複数のテナントが入居する場合は、あえて隣接させたり、向かい合った配置にする。

 ららぽーとの各地のモールでは、生活雑貨大手の「無印良品」は同業の「ロフト」と隣合ったり、「Francfranc(フランフラン)」の真向かいに配置されている。TOKYO-BAYでは25年のリニューアルを機に、それまで施設の両端に離していた子供用品のアカチャンホンポとトイザらス・ベビーザらスをあえて隣り合わせた。アカチャンホンポは「顧客優先の視点で見れば一気に買い物できるメリットがある」と理解を示す。

 エキスポシティでもファストファッションのユニクロとZARA、旅行会社ではJTBと阪急交通社が隣合う。阪急交通社は、旅行説明会で顧客を呼び込む販路を得意とし、直営店舗の出店は少ない。業界最大手のJTBと店舗で直接対決する形の阪急交通社は「顧客利便性から見ればいいこと。高級志向から格安商品まで幅広く商品をそろえて対応したい」と意気込む。

 事業主側はモール全体の活性化のためには、顧客のテナント企業に対しても厳しい現実を突きつける。売り上げが伸び悩めば、テナントは契約期間中でも撤退することもあるようだ。

 モールには地元商店からの出店希望もある。運営者としても地元経済との共存共栄の観点から積極的な受け入れ姿勢をみせる。ただ、いざ来店者や売り上げが振るわなければ早期撤退を迫られることは少なくない。

 「売り上げにこだわらずに運営したい」という入居テナントもある。「家賃を払っているのだから自由にやらせてほしい」との主張だ。これに対し、運営者は「ガラガラの店舗があれば周辺のテナントが活気を失い迷惑をこうむる」と強調する。

 エキスポシティは、鳴り物入りの複合施設として広域からの集客を見込むが、商業施設としてのマーケティングは未知数の部分も多い。広域商圏で見れば、ららぽーと以外のモール、大阪市内中心部の百貨店とも競合になりうるが現時点では具体的にどう影響するかは不透明だ。

 ただ、話題のミュージアムなどの併設で高まる集客効果を商業施設の売り上げにつなげられるか。入居テナントの実力も問われている。