VW不正 ディーゼル車の国内販売影響を懸念 他社は「同一視が怖い」の声

 
「パサート」の新型車をアピールする独フォルクスワーゲンのデザイナー。日本へのディーゼル車の投入を来年予定していた=7月16日、東京都渋谷区

 独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受け、ディーゼル車の国内販売への影響が懸念されている。VWの日本法人は24日、来年予定していた国内への投入を見直す可能性を明らかにした。ディーゼル車は力強い走りや燃料の安さから国内でも人気が高まり始めていたものの、不正問題が需要拡大に冷や水を浴びせかねない。

 VWの日本法人フォルクスワーゲングループジャパンは、主力モデル「パサート」のディーゼルエンジン搭載車を年内に発表し、来年1~3月に投入する計画を打ち出していた。今回の問題で、同社の担当者は「ドイツ本社とも相談するが、見直す可能性がある」と述べた。今後の事実究明や消費者の反応などを見極める考えだ。

 日本では大気汚染や騒音などのマイナスイメージから消費者に敬遠されてきたディーゼル車だが、近年、最新の環境規制をクリアしたクリーンディーゼル車をメーカーが開発。低燃費で加速性能があり、燃料の軽油も安いため、国内市場全体が伸び悩む中で、好調な販売を維持していた。日本自動車販売協会連合会(自販連)によると、今年1~8月の販売は10万5127台と前年同期の2.3倍に急拡大している。

 2012年にスポーツ用多目的車「CX-5」のディーゼル車を投入して市場を牽引(けんいん)してきたマツダは、モデル設定がディーゼル車のみの「CX-3」を今年2月に発売。6月にはトヨタ自動車が乗用車として8年ぶりにディーゼル車を復活させた。独メルセデス・ベンツや独BMWなど海外勢もハイブリッド車に並ぶ「エコカー」としてアピールしていた。

 排ガス中の有害物質の低減方法はメーカーごとに異なっており、マツダは「各国の法令を順守している」と強調する。今回のVWの不正について、他社からは「ディーゼル車が環境に悪いと同一視されることが怖い」と懸念する声が上がっている。

 各国の環境規制をクリアしたクリーンディーゼル車は燃費の良さや二酸化炭素(CO2)の排出量の少なさから欧州を中心に支持されてきたが、大気汚染物質の原因との指摘もある。

 マツダは得意とするクリーンディーゼル車を米国では販売していないものの、24日の東京株式市場で同社の株価は終値で前週末比134円安の1836円と7%近くも急落。VWにターボチャージャー(過給器)を納入するIHIが年初来安値を一時つけ、グループ会社が変速機を供給するアイシン精機も前週末比の下落率が7%を超えた。