次世代「ETC」普及へ険しい道のり 渋滞解消など期待されるが…

高論卓説

 ■目指せ20年東京五輪の渋滞解消

 8月から次世代型のETC車載器(ETC2.0)による新しい情報提供サービスが開始された。

 ETCとはエレクトロニック・トール・コレクション・システムの略で、「電子式自動料金徴収システム」と訳される。要するに高速道路などの有料道路の料金所で車を止めることなく、料金の徴収ができる便利なシステムのことだ。おかげで、料金所で通行券を受け取ったり、車を止めて支払いのために小銭を用意したりといった手間が省けるようになった。このETCシステムが、バージョンアップされたものが、ETC2.0である。

 とはいうもののETC2.0は「ITSスポットサービス」として既に整備を進めてきたものを、昨年10月に名称変更したものだ。

 ETC2.0とは何なのか? 要約すると「全国の高速道路上や道の駅に設置済みの約1600カ所の道路側のアンテナであるITSスポットとの高速・大容量・双方向通信を活用した世界初の路車協調システムによる運転支援サービス」のことである。料金の徴収にとどまっていた旧ETCのサービスをビッグデータの活用により、運転支援システムへと機能の拡張を実施していくものだ。

 具体的には「広域な道路情報をリアルタイムに配信し、ドライバーが渋滞を回避するための最適ルートの選択が可能になる」「前方の落下物や合流注意地点、先の見えないカーブなどの注意喚起を事前に行う」「渋滞などを迂回(うかい)する経路を走行したドライバーを優遇する措置を実施する」「高速道路以外の民間駐車場などの決済サービス提供などを検討する」といった各種運転支援サービスの向上を目指している。

 日本の自動車保有台数は約8000万台強で、そのうち旧バージョンのETC1.0装着車が5000万台強、ETC2.0対応タイプは約70万台にとどまる。高速道路の料金所では、今年5月時点で1日当たり699万台がETCを使い、利用率は約9割という。ETCサービスは2001年に本格スタートし、道路公団民営化が実施された05年に利用率が5割を超え、現在に至っている。

 利用が増えたことで新たな問題も発生している。道路会社が負担する料金収受コストは、13年のデータでETC車は36円、現金支払いが182円で、ETC車と非ETC車の1台当たりのコストに5倍の開きが出ている。非ETC車との費用負担をいかに公平にするかも、今後の重要な課題といえそうだ。

 またETC2.0を利用して、20年の東京五輪・パラリンピックまでに首都圏の高速道路で渋滞解消を目指すことも目標に掲げられている。ただ、旧バージョンのETCのままでは2.0のサービスを受けられない。また渋滞情報などを収集するには、2.0の利用車の情報も必要だ。2.0対応の車載器には音声で情報を伝える発話型、カーナビゲーションやスマートフォンとの連動型などがあるが、いずれにせよ車載器などの買い替えが必要となる。

 東京五輪までに、ETCユーザーを2.0へ更新させ、さらに非装着車を減少させるというのは、新国立競技場の建設以上に、期日に間に合わせるのが難しそうだ。

 ここは一つ、車載器と双方向で情報をやり取りするだけでなく、インターネットを利用して広く叡智(えいち)を募ってみてはどうだろうか。

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【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年から旭リサーチセンター、遼寧中旭智業有限公司 主幹研究員、57歳。大阪府出身。