ネットフリックスが6月23日、300名の解雇を発表しました。5月の150名に続いて、2カ月連続のリストラです。ディズニーなどの参入もあり、ついに苦境に直面しているネットフリックスの現状から2つのトピックスを考えてみたいと思います。1つは「サブスクリプション(サブスク)」、もう1つは「廉価版」です。
サブスクvs生活必需品
まず「サブスク」です。サブスクを販売する側にとっては様々な利点がありますが、購入する側にとっては
- 月の負担感が低い
という点が最も大きく作用しています。負担「感」であることが重要です。負担感が低いと消費者は「コストパフォーマンスの測定」や「製品・サービス比較」をしなくなりますし、「とりあえず観るかもしれないから」という「とりあえず」の加入が多くなってくるのです。
やめることを一瞬検討することもありますが、負担感が低いので「解約が面倒」「また見るかも」という継続も続きやすいのです。これは、古くは新聞や保険の分野で見られた手法だと言えるでしょう。つまり負担感を低くすることで「コスパは不明だが、何となく必要な気がするもの」というポジションに収まることに成功するのです。
もちろん、サービスの品質の高さは成功の要素でもありますが、本当に品質を理解し、ここにしかないサービスの価値を見つけている層を獲得するだけでは大きな成功には至りません。ビジネスを行なう側からすると、「サブスク」という手法をとる理由として、この「価格の負担感」を操作することができる点が重要なのです。
そして現在、この「負担感」という要素こそが苦境の要因となっています。ネットフリックス社はこの4月から6月に、さらに200万人の解約を見込んでいて、その要因の一つに「インフレ」を挙げています。つまり「家計の見直し」の対象となってしまっているのです。
インフレ下では、ネットフリックスのライバルは、他のエンタメではなく「生活必需品」になってきます。毎月の「保険」「学費」などと比較されるようになるのです。
これはとても難しい戦いになりますね。もし売り切りの商品でしたら、このような比較がされることはないので、「サブスク」ならではの宿命と言えるかも知れません。「見たいときに、その都度支払う」システムよりは、まだ負担感が低い現状かも知れませんが、「お金を払い続けている」という当たり前の事実に気づいてしまった消費者との向き合い方を考えなくてはいけないフェーズにあるかも知れません。
質を落とした「そこそこ」の商品×「そこそこ」の購買層
2つ目のトピックスである「廉価版」は前述の流れから注目されます。ネットフリックスはこれまでは頑なに拒否していた「広告を入れることによって安くなるプラン」を検討しています。
このような「質を落として安くする」戦略が日本でどのように展開され、どのような結果になるのかという点です。広告が入って安くなることを、「既存のテレビのようなサービスでありながら支払いが必要」と捉えられるのでしょうか、それとも「少し我慢すればネットフリックスのサービスを安く買える」と捉えられるのでしょうか。