キリン、海外リスク見極め必要に ミャンマー撤退

    キリンホールディングス(HD)は30日、撤退を表明しているミャンマー事業について、国軍系企業との合弁会社「ミャンマー・ブルワリー(MBL)」の全保有株式をMBLに売却すると発表した。ミャンマー国軍系企業との合弁解消にようやく道筋をつけた格好だ。ミャンマー事業はかつて高成長だったが、昨年2月に国軍がクーデターを起こして事業環境が一変した。日本国内でビールや清涼飲料の市場が縮小する中、海外戦略の再構築が課題となる。

    「これまで一緒に努力してきた現地従業員や取引先などのことを考えると、ミャンマー事業から身を引くのは非常に残念で、無念としかいいようがない」。キリンHDの西村慶介副社長は30日のオンライン記者会見で悔しさをにじませた。

    「アジア最後のフロンティア」と呼ばれたミャンマーにキリンが進出したのは平成27年。合弁会社は現地のビール市場で約8割のシェアを握り、「政変前まではわれわれの期待を上回る成長を実現し、収益に貢献してきた」(西村氏)。クーデター前の令和2年12月期にはキリンHDの連結事業利益の1割弱を稼いだ。

    キリンは当初、国軍系企業が合弁会社から出ていく形での現地での事業継続を望んでいた。だが、国軍系企業の譲歩が得られず今年2月に撤退を決めていた。

    キリンHDは、今年1月に北米のクラフトビール会社の買収を完了した一方、2月には中国での清涼飲料事業からの撤退も発表。西村氏は会見で「国外にはまだ成長している市場がいくつもあり、積極的に出ていって果実を得る」と海外で商機を探り続ける姿勢だ。企業に人権などへの配慮がより求められる中、リスクの見極めが問われている。(森田晶宏)


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