異例の6月梅雨明け「四国の水がめ」直撃、取水制限も

    貯水率が下がった「四国の水がめ」早明浦ダム=28日午後、高知県(本社ヘリから、鳥越瑞絵撮影)
    貯水率が下がった「四国の水がめ」早明浦ダム=28日午後、高知県(本社ヘリから、鳥越瑞絵撮影)

    異例の早さで梅雨明けした西日本各地では雨が少ない状況が続き、水不足への懸念が高まっている。「四国の水がめ」では貯水率が著しく低下し、取水制限も始まった。まとまった降雨がなければ底をつく恐れがあり、自治体は住民に一層の節水を求めている。水不足の影響は今後、関西でも広がる可能性があり、関係者は状況を注視している。

    四国全域に水を供給する高知県の早明浦(さめうら)ダム(有効貯水量2億8900万立方メートル)。貯水率は28日午前0時時点で34・9%にとどまり、平年値を約50ポイント下回っている。これによってダム湖に沈んだ旧大川村役場庁舎の一部が水面に出現した。

    ダムがある吉野川上流域は、今年初めから降雨量が少なく、3~5月には香川県への供給を20%削減する取水制限を複数回実施した。今月5日からは、これを35%削減する次の段階の取水制限に入っている。

    四国4県などでつくる吉野川水系水利用連絡協議会は、ダムの貯水率が30%まで下がれば、香川県への供給を50%減らす「第3次取水制限」を行うと決めている。国土交通省四国地方整備局によると、早ければ7月1日にも貯水率が30%になる可能性がある。第3次取水制限が実施されれば、9年ぶりの事態となる。

    長年の水不足に悩まされてきた香川県。早明浦ダムの貯水率が0%となった平成6年には夜間断水や給水制限により、市民生活に深刻な影響が出た。

    高松市の一部では現在、生活に支障のない範囲で水道の圧力を下げて水量を抑制する「減圧給水」が行われている。県広域水道企業団は水不足をにらみ、各家庭の水道の元栓を閉めて水量を減らす「自主減圧」の方法をホームページなどで知らせ、節水を呼び掛けている。担当者は「梅雨も明けて水源の状況は厳しい。水の使い方を工夫して、節水に協力いただければ」とする。

    水位が下がり、かつてダム湖に沈んだ旧大川村役場が水面に出現した=28日午後、高知県の早明浦ダム(本社ヘリから、鳥越瑞絵撮影)
    水位が下がり、かつてダム湖に沈んだ旧大川村役場が水面に出現した=28日午後、高知県の早明浦ダム(本社ヘリから、鳥越瑞絵撮影)

    関西ではどうか。「近畿の水がめ」である琵琶湖の水位は28日午後時点で例年に比べ、特段低い状況ではない。

    ただ気がかりな点も。今後も降雨量が少ない状況が続けば水の流れが滞り、植物プランクトンが水面を覆う「アオコ」が発生する恐れがある。アオコは悪臭発生の原因となったり、水道水の水質に影響を与えたりする可能性があり、滋賀県の担当者は「今後も毎月の水質調査で影響を注視していきたい」と話す。

    農業への影響は出るのか。大阪府南部の泉州特産の水ナスは、7~8月が中元向けなどで出荷のピークを迎える。おいしい水ナスには豊富な水が不可欠だ。

    同府貝塚市内で水ナスを栽培する「中出農園」の中出達也さん(34)は「雨が少なくても、水はため池からひいているので不安はない。品質もよいものができている」。ただJA大阪泉州(同府泉佐野市)の担当者は「6月までは水ナスの木が若いので暑くても水を吸収してよく育つが、7、8月は暑さで弱ってくる時期。梅雨明けが早く暑い期間が長くなると、水不足の影響が出やすい」と指摘した。


    Recommend

    Biz Plus