JR西日本は6月15日、湖西線にAI技術を活用した強風予測システムを試験導入すると発表した。湖西線は北陸本線近江塩津駅から東海道本線山科駅を結ぶ74.1キロの路線で、関西と北陸を短絡するルートとして1974年に開業した比較的新しい路線である。
それまで北陸に向かう優等列車は琵琶湖の東岸、東海道本線米原経由で走っていたが、翌1975年からはほとんどが湖西線経由となり、京都~敦賀間の所要時間は、特急列車が1時間22分から1時間7分へ約15分、普通列車は2時間50分から2時間9分へ約41分も短縮された(現在は最高速度130キロ運転を行う特急サンダーバードが京都~敦賀間を50分弱で結んでいる)。
そんな湖西線にはひとつ大きな弱点がある。湖西線の西側にそびえたつ、標高1214メートルの比良山を超えて、琵琶湖に向って一気に吹き降ろす「比良おろし」と呼ばれる強風である。
時に風速30メートルを超えるため比良おろしは、湖西線の安定運行の大きな障害となっており、1997年6月には台風通過後の吹き返しが比良山系を下り、推定最大瞬間風速57メートルもの強風となって比良駅停車中の貨物列車の一部を横転させるという事故も発生している。
湖西線が風の影響を受けやすい理由がもうひとつある。関西と北陸の短絡を目的に整備された湖西線は、安全に高速運転を行うため、ほとんどの区間が高架となっており、強風の影響を受けやすい。そのため通常では風速30メートル以上で運転を見合わせるところ、湖西線は風速25メートル以上で強風規制を行っていた。風が強い上に規制が厳しいのだから列車が止まるのも当然だ。
そこでJR西日本は2008年までに総延長14.6キロにわたり線路の山側に防風柵を整備し、強風規制を緩和した。当時の報道によれば、年間の運転見合わせ時間がおおむね3分の1になったという。しかし、それでも昨年度は約50日、運転規制を実施しており、同社は対応に苦慮している。