病床確保へ自治体に権限 事前協定義務化見送り

    首相官邸
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    新型コロナウイルス禍を踏まえ、政府が17日に決めた感染症対応の抜本強化策は、感染の急拡大時など有事に必要な病床を確実に確保するため、自治体が事前に医療機関と協定を結び、強い権限を持って勧告・指示できる仕組みが盛り込まれた。ただ、従わない場合の罰則を設けるかどうかは慎重に検討する。また、全国の医療機関の約8割を占める民間医療機関の協定締結義務化も見送られ、実効性を疑問視する声もある。 政府は昨年末、感染力の強い新型コロナのオミクロン株の感染拡大に備え、自治体と医療機関の間で書面により緊急時の入院受け入れを明確化するよう求めた。今回の強化策ではさらに踏み込み、自治体が事前に医療機関と協定を結び、緊急時には協定に基づき病床や医療が提供されるように知事が勧告・指示できるようにする。

    ただ、公立・公的医療機関などは協定締結が義務化されたのに対し、一般の民間医療機関は義務化の対象にならなかった。ある地方の医師会幹部は「経営が苦しく、緊急時のための病床を空けておくのが難しい民間医療機関では指示に応じられないケースも出てくるだろう」と明かす。

    後藤茂之厚生労働相は17日の記者会見で、民間の医療機関との協定に関し「今後、具体的な対応を検討する」と述べるにとどめた。

    深刻な人材不足の中、厳しい運営を強いられる医療機関は多い。日本医師会の中川俊男会長は15日の記者会見で「行政と医師会は車の両輪で、信頼関係が大事だが、知事の権限が強まるのは良いことばかりではない」と懸念を示した。

    病床不足を繰り返さないためには、民間病院との円滑な事前協定の締結推進がカギとなる。政府には病床確保に応じる医療機関への手厚い支援も求められている。(村上智博)


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