新型コロナウイルス禍でテレワークなどが普及する中、欧米諸国で主流の〝ジョブ型〟雇用が注目されている。業務内容や役割が明確に定められている人事制度で、国内でも大手企業を中心に広まりつつある。こうした中、公平性を高めたジョブ型により進化させようという動きも出てきた。
ジョブ型雇用は職務を限定しない従来のメンバーシップ型雇用と異なり、働き手の専門性を高められるのが利点だ。会社が業務に最適な人材を配置する「仕事主体」の仕組みといえる。
平成27年からジョブ型に移行したリクルートグループの人材派遣会社、リクルートスタッフィング(東京都中央区)は、ライフスタイルの変化に応じた、より柔軟な働き方ができる人事制度に再構築する。
同社は、年齢や性別、雇用形態にとらわれないシンプルな新人事制度を1875人の全従業員を対象に10月から導入する。総合職や地域限定職、職域限定職と正社員だけでも3形態、ほかに契約社員とパートを合わせると5つある雇用形態を、成果型の「ミッションスタイル」と業務遂行型の「ジョブスタイル」の2つに再編する。
待遇の公平化も進めるため、契約社員やパート、正社員といった区分けをやめ、有期雇用と無期雇用の2通りにする。その上で、等級(グレード)を見直し、改めて導入する。等級は、入社年次や経験にかかわらず、個々が担う職務の価値、期待する成果に応じたものに変更する。同時に介護や育児に限られていた就業時間の短縮制度も拡大し、個々のライフスタイルに合わせて選ぶことができるようにする。
同社人事部の中西敦部長は「もともとジョブ型の働き方が中心的な人材派遣会社だからこそ、こうした仕組みへの移行がいち早く実現できる。個々の従業員が働きやすさと働きがいを両立でき、多様な可能性を生かせる制度であることを広く紹介したい」と話す。
一方、大手では富士通が4月、グループ企業を含め国内で働く一般社員4万5000人にジョブ型を導入した。グループ全体の国内従業員は約8万人。既に令和3年度から約1万5000人の管理職に対して同様の仕組みを導入していることから、今回の一般社員への導入で計6万人、グループの国内従業員の4分の3がジョブ型に移行した格好だ。同様の取り組みは日立製作所やKDDIなどでも進められている。
コロナ禍で働き方は大きく変化した。コロナ後を見据え、人事制度改革は一段と進みそうだ。
(青山博美)