ペットとの共生社会実現に向けて走り出す 『ペット動物のイノベーション創出』イベント開催

    道川氏「1つ目は『BetterCitiesforpets』。シェルターとお家、公園、ビジネスの4つの重点分野に基づく12のチェック項目を定め、市や自治体がチェック項目に沿って認証を行う仕組みです。

    2つ目は、イタリアのトスカーナ州で現在進行している、アニマルフレンドリーなスマートシティを作る取り組みです。同州で過ごす人々は、ペットを飼うことが人の幸福度向上に寄与するという共通認識を持っています。そのため交通や環境整備などのハード面だけではなく、ペットセラピーなどのソフト面からも積極的にアプローチを行い、ペットと人が共に暮らしやすい街づくりを推進しているそうです」

    道川氏は最後に、「家族や友人と旅行するのと同じように、ペットを連れてより多くの場所を訪れることができる世界を実現していきたい」と意気込みを話して締めくくりました。

    続いて西武ホールディングスの田中健司氏が登壇し、「ペット同伴の社会的受容性向上の課題整理」をテーマに事例紹介を行いました。具体的には、西武グループが展開する『PETSMILEPROJECT』の取り組みをもとに、ペット同伴の施設における企業や飼い主、ドッグトレーナーにとっての課題と、それらの解決策について紹介しました。

    株式会社西武ホールディングス経営企画本部西武ラボ部長田中健司氏
    株式会社西武ホールディングス経営企画本部西武ラボ部長田中健司氏

    田中氏「ドッグライセンス制度の運用で、企業は一定のしつけレベルをクリアしているペットを受け入れやすくなります。また飼い主は、一定のしつけレベルに到達すれば、ペットとの行動範囲をより広げられると考えています」

    田中氏「加えて、実効性のあるライセンス制度の取得は運転免許書や自動車教習所と同様の扱いとなるため、関心を持つドッグトレーナーの数もますます増えるはずです。これらのメリットを踏まえ、ドッグライセンス制度の運用はペットと飼い主のしつけやマナーレベルを可視化し、『ペット同伴』と社会全体でより受容することにもつながると考えています」

    続いて登壇したのは、24時間ペットのお悩み相談サービスを提供するペッツオーライ代表の小早川斉氏。同社は、ペットの「ワクチンや狂犬病の接種状態」「飼い主の知識」「愛犬のしつけ習得レベル」などをデジタルで証明・認証できるアプリ『Wan!Pass(ワンパス)』の実証実験を開始しています。

    同氏は「ペットとの同伴行動をアップデートする新しい体験」をテーマに、施設側の現状やペットと人の共生社会実現に向けた想いを話しました。

    小早川氏「ペットの同伴行動を許容する上で、施設側の取り組みは大きく二つのパターンに別れます。一つは喫煙者のケースと同じように、行動できるエリアとそうでないエリアを完全に分離すること。もう一つは、小さな子供連れのケースと同じように、マナーが一定水準にまで達していることを前提に、共通の活動エリアを設けることです」

    2つのパターンを提示した上で、同氏は国内の現状について「飼い主が理想とする『ペットとの共生社会』のあり方と、日本の実態が乖離している」と続けます。

    小早川氏「街中に目を向けると、ペットが苦手な方やアレルギーを持つ方に対して『来ないでください』と隔離に近い言葉で表現されていることがあります。しかし、飼い主にとってペットは自分の子供と同じようなもの。ペットを家に留守番させるのを心配したり、一緒に旅行に行って同じ体験をさせたいと思ったりするのは当然のことです。

    マナーやしつけが指定水準をクリアしたペットの飼い主に対しては、活動できるエリアを拡大するなどの取り組みを通して、『しつけができれば共に過ごせる範囲が広がる』と可能性を提示することが大切だと考えています」

    最後に登壇したのは、一般社団法人軽井沢観光協会の西山紀子氏。「ドッグツーリズムによる地域活性〜ペット共生社会の実現に向けて〜」をテーマに、同氏が取り組む「軽井沢ドッグツーリズム推進」プロジェクトや軽井沢町におけるペット産業の展望を話しました。


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