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訪日観光客受け入れ ガイドラインに歓迎と戸惑い  

観光客らでにぎわう清水寺への参道。外国人の姿も散見された=7日、京都市東山区(渡辺恭晃撮影)
観光客らでにぎわう清水寺への参道。外国人の姿も散見された=7日、京都市東山区(渡辺恭晃撮影)

国土交通省は7日、訪日観光客の受け入れ指針を公表した。新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、旅行業者はツアー参加者に対し、マスク着用や消毒の徹底、医療費がカバーされる海外旅行保険への加入などを求める。

10日から認められるのは、添乗員同行のパッケージツアーのみだが、関係者や観光地からは「待っていた」と歓迎の声が上がる。大幅に落ち込んだ旅行消費をどう復活させるか。当面は手探りでの対応となりそうだ。

旅行会社は歓迎と不安

「2年以上もの間、首を長くして待っていた瞬間がやっと来たという感じ」。近畿日本ツーリスト(東京)でインバウンド(訪日外国人客)などを担当する松岡正晴・事業推進本部長はほっとした表情を浮かべた。

同社は再開前に政府が行った「実証事業」に参加し、米・豪・タイから計12人を受け入れた実績がある。「コロナ禍前とは全く違うが、感染者が出た場合にどう対応するかなど、いいレッスンを積めた」(松岡さん)。

阪急交通社(大阪)の担当者も「快適な旅行をしてもらい、さらに日本のファンとなってもらえるようにおもてなしの態勢を整えていきたい」と意気込んだ。

それでも不安がないわけではない。インバウンドに詳しい航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「添乗員の負担が相当大きくなる」と危惧する。今回の政府の指針に基づけば、引率といった従来業務に加え、感染者が出た場合の対処、飲食店や交通機関での行動履歴の記録など、業務量が増えることは明らかだ。松岡さんは「どんな場面にも対応できるようにどう教育するか。今後の課題」と話す。

感染対策として、一つのツアー参加者を減らすことも検討するが、添乗員の増員や複数の移動手段の確保など新たな課題も見えている。

文化の違いへの配慮も求められる。日本人にとって当たり前のマスク着用を、どうインバウンドに理解を求めるか。ある旅行会社の担当者は「国によってマスクのあり方が違うと、しっかり示していくしかない」と力を込める。

観光庁によると、海外4カ国を対象とした旅行客受け入れの実証事業では、本来マスクを着用しなくてもよい温泉で、着用したまま入浴した外国人もいた。どういった場面でマスクが必要か分かりやすく説明するため観光庁は一目で分かる絵文字「ピクトグラム」を作成。実証事業では「分かりやすい」と好評だった。

観光庁が作成したピクトグラムの例。再開を前に政府が行った実証事業で外国人に分かりやすいと好評だったという(観光庁提供)
観光庁が作成したピクトグラムの例。再開を前に政府が行った実証事業で外国人に分かりやすいと好評だったという(観光庁提供)

観光地も試行錯誤

一方で、外国人観光客を受け入れる自治体も試行錯誤が続きそうだ。

訪日客に人気の観光地・京都市では、新型コロナ禍で外国人観光客の宿泊がほぼゼロに。コロナ禍前には、外国人客が4割を占めていたホテルグランヴィア京都(京都市下京区)では、外国人客の受け入れ再開が決まり、秋に向けてツアー客の宿泊予約が入ったという。

政府が発表したガイドラインでは、宿泊事業者に対し、感染予防対策を呼びかける外国語のリーフレットの作成を求めている。同ホテルでは、これまでも日本語と英語でマスク着用や検温の実施を呼びかけるポスターなどを掲示しており、担当者は「早く元通りになって国内外のお客さまに来てもらうことで京都の観光業が盛り上がるきっかけになれば」と期待している。

富士山観光に力を入れる静岡県の担当者も「感染対策と観光促進は両にらみ。ガイドラインに沿って対応を進めたい」としている。

再開されるのが添乗員付きのパッケージツアーに限られたことについて、旅行ジャーナリストの村田和子氏は「団体客に限定したのは妥当な措置。個人旅行よりも参加者は自制して行動するはずだ」と指摘。「インバウンドを受け入れながら国内の観光事業をどう復興させるのか。受け入れ再開は両者のバランスを考えるよい機会になる」と話した。


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