東京都の小池百合子知事は5月31日、都内で開催された「東京都自転車政策勉強会」で登壇し、レインボーブリッジ(高速道路)を封鎖して自転車で走行する11月の「臨海部レガシースポーツイベント」の開催に向けて「東京を自転車天国にしたい」と意欲を語った。新型コロナウイルス禍にあった昨年5月、都は自転車需要の高まりに応える格好で走行環境の整備や安全利用などを掲げた「自転車活用推進計画」を改訂、取り組みを加速する方針を打ち出している。計画の推進と併せて大規模なイベントを開催することで自転車利用の機運を高め、政策の後押しにつなげたい考えだ。
臨海部に加え来年度は多摩地域でも
臨海部レガシースポーツイベントは、1993年の開通以来初となるレインボーブリッジ上の自転車走行をはじめ、「東京港海の森トンネル」など普段通ることができない東京のランドマークとなるスポットを交通規制し、走行可能にする都市型イベント。その他にもプロの自転車選手によるエキシビションレースや家族連れも参加可能な体験イベントなど、総額約20億円の予算を投じて開催される一大イベントだ。
11月23日に開催予定で、公募開始は7月を見込んでいる。東京五輪で新たに整備されたスポーツ施設が多く集まる臨海部での開催に加え、さらに来年度は五輪競技の一種目であるロードレースの舞台となった多摩地域での開催も予定されている。
都市部の道路を自動車通行止めにして開催する大規模な自転車イベントは、米国のニューヨーク市で開催される「バイクニューヨーク」や、ロンドン五輪を機に誕生した大型自転車イベント「ライドロンドン」が知られる。いずれも数万人規模の一大イベントで、海外からの参加者も多く観光効果も高い。
今回の都のイベント規模は全体でおよそ3000人としているが、同イベントの発案者の1人である東京都議会議員の白戸太朗氏は「規模も定員も現状がゴールだとは思っていない。いずれはバイクニューヨークやロンドンのように数万人規模の開催に成長させていきたいが、まずは安全面で実績を作ることが優先」としている。
社会を変える後押しに
新型コロナウイルス禍で「密閉、密集、密接」の3密を回避する交通手段として拡大したとされる自転車の利用。自転車を取り巻く社会情勢が大きく変化するなかで、自転車の走行空間の問題や交通ルールをめぐる新たな課題も浮かび上がった。
小池知事は、「コロナ禍を乗り越えた先に元の東京に戻るのではなく、その経験を都市の持続的な発展に繋げる政策を展開する必要がある」と強調。自転車の活用に関して「利点を伸ばし、課題に対処していくことが将来にわたって安全で快適な都市を実現することに繋がっていく」とし、今後10年間の具体的な施策を総合的に取りまとめた「東京都自転車活用推進計画」に基づいて取り組みを強化する考えを示した。
白戸議員は、「自転車道を整備するにも都民に必要性を感じてもらうことが重要。いかに自転車利用の機運を高められるかがこの先の自転車計画のベースになる」と強調。「東京が変われば地方に派生し、日本全体が変わる。マラソンでも自転車でもそれはできると思っている」とレガシーイベントを開催する意義を語った。
同イベントの実行委員長を務める、元F1レーサーでジャパンサイクルリーグ(東京都千代田区)の代表取締役の片山右京氏は「残念なことに(現在の走行環境では)自転車が悪者扱いされるケースが多い」との見方を提示。「車としての自転車のプレゼンスを上げるには道路の再配分という大きな話にもなるかもしれないが、そういうところからやらなければ変わらない。これをターニングポイントに日本の自転車文化を世界の水準に近づけていきたい」とした。