要介護・要支援層をサポート シニア/CareTechベンチャーが課題解決に貢献

    デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「MorningPitch(モーニングピッチ)」というイベントを東京・大手町で開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげることを狙いとしています。

    モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回は65歳以上の要介護・要支援者を対象にサービスを提供するシニア/CareTech系ベンチャーです。

    65歳以上の高齢者の割合は過去最高

    総務省の発表によると2021年10月1日時点の外国人を含む総人口は、前年同月と比べて64万人少ない1億2550万人でした。減少率は0.51%で統計を取り始めた1950年以来、最大。島根県の人口(66万人)相当を失うというインパクトです。

    労働の担い手となる15~64歳の「生産年齢人口」は58万人減の7450万人で、総人口に占める割合は59.4%と過去最低を更新しており、少子高齢化に歯止めがかかっていません。一方、65歳以上の高齢者は3621万人で、総人口に占める割合は28.9%と過去最高になりました。高齢者のうち、要介護・要支援の対象となるケアシニアは約689万人で、全体の20%近くを占めます。

    ケアシニアの層は〝4K〟の領域で課題を抱える

    ケアシニアの層は家族(親族)と経済、孤独、健康の頭文字「K」から取った「4K」について課題を抱えています。このため家族を中心に経済と孤独、経済と健康、健康と孤独というカテゴリーに分けて、それぞれの分野でシニアの課題解決に貢献するベンチャーの動きを紹介します。

    経済と孤独の領域に属するベンチャーの職種は家事代行、コミュニケーション、リフォーム、相続・事業承継です。葬儀ITベンチャーの「よりそう」は、農林中金キャピタル、住友生命保険などから35億円超の資金を調達。保険や介護といった葬儀周辺領域に強みを持つ事業会社と、ライフエンディングプラットフォームの構築に向け共同で事業を進めています。

    健康管理や人材、買い物代行などのベンチャーで構成される経済と健康の領域では、オランダのロイヤルフィリップスとインテグリティ・ヘルスケアが資本提携を行い、在宅ケアソリューションとオンライン診療・疾患管理システムの統合に力を入れています。また、米国では老化防止薬の開発や老化で傷ついた組織の再生を試みるベンチャーが、相次いで上場を果たしました。

    健康と孤独のカテゴリーは介護や訪問サービス、見守り、IoTなどによって構成されています。ケアプランAIのウェルモは20億4000万円を調達し、東京海上日動火災保険などと資本業務提携を行い、介護現場のDX化を推進しています。医療情報専門サイトを運営するエムスリーは、訪問介護・看護事業所向け業務支援SaaSを提供しているロジックを買収しました。

    高齢者の増加に伴いソリューョンを提供するベンチャーの数も増え、市場も拡大しています。大企業との連携や資金調達を通じイノベーションを起こす動きは、さらに活発化するでしょう。今回はこれら3つの領域からベンチャー5社を紹介します。


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