愛称「東武アーバンパークライン」の制定や新型車両の導入、急行運転の開始など、ここ10年で大きく変貌を遂げている東武野田線にまた新たな変化が訪れようとしている。東武鉄道は4月28日、現在は全てが6両編成で運行されている野田線に5両編成の新型車両を導入し、あわせて既存の車両も5両化すると発表したのである。首都圏大手私鉄では珍しい「減車」に踏み切ったのはなぜなのか。
野田線は開業から戦後しばらくまでは、のどかな田舎を走る路線だった。しかし70年代以降、東京都市圏が都心から30~40キロ圏に広がると、大宮、柏、船橋駅の近郊で住宅開発が進み、利用者が急増。利用者が多い区間の複線化が進められた。当時、野田線で使われていた「3000系」車両は、現在では一般的な20メートル車(1両あたりの長さ)より一回り小さい18メートル車だったので、1編成あたりの長さは108メートルだった。
80年代に入ると20メートル車「8000系」「5000系」が投入され、一時は20メートル4両編成(80メートル)、20メートル6両編成(120メートル)、18メートル6両編成(108メートル)が混在して運用された。全ての車両が20メートル車になったのは1992年のことだった。つまり20メートル車5両編成に切り替わると、18メートル車6両編成時代より短くなることになる。
果たしてこれで現代の輸送需要をまかなえるのだろうか。プレスリリースには「5両編成化することで、さらなる省エネ化を図り環境問題に対応し、また5両編成後も適正な列車本数の維持に努めることで、新しい生活様式に伴うご利用状況の変化に対応」するとある。「新しい生活様式に伴うご利用状況の変化」とはつまり、コロナの影響を意味する言葉だ。
ではアフターコロナはどの程度の輸送需要になると見積もっているのだろうか。東武鉄道に話を聞くと、具体的な数値は回答を差し控えるとしながらも「コロナ禍前の水準に戻ることは想定しづらい」とのことだった。
東武鉄道全体では2023年度以降、コロナ前を基準に定期旅客85%、定期外旅客90%程度まで回復を見込んでいるという。東急電鉄などは、定期外利用は長期的にはコロナ前と同水準まで回復するという見方をしているが、東武はそう考えていないようだ(都市部の路線と郊外の路線では当然、差はあるだろう)。