目に見えて物価が上昇し、買い物の際に個々の商品の値上がりが感じられるようになってきました。実際に、パソコンやスマートフォンで「値上げ」と検索すると、値上げ関連のニュースがずらりと並びます。凡そ30年ぶりの物価上昇となりそうな2022年に賢いお金の使い方として知っておくべきことは何でしょう?
長く続いたデフレはステルス値上げを生んだ
世界はインフレだが、日本はデフレと言われてきました。総務省の消費者物価指数によると、日本は長らくデフレの状態が続いてきました。現在、日本銀行が目指す物価上昇率は2.0%ですが、2014年を除くと日本の物価上昇率が2.0%を最後に超えたのは1991年の3.3%でした。ほぼ平成元号の期間中、日本の物価はあまり上昇せず、僅かな上昇か、物価が下落するデフレの状態が続きました。
物価が上昇しないこと自体は悪いことではありません。ただ、物価が上昇しない状態が長く続くと、物価変動に対する拒否反応が出てくるのか、日本では値上げが嫌われます。わかりやすく価格を上げると商品やサービスが売れなくなるため、ステルス値上げと呼ばれるように価格を上げずに容量を減らすことで実質的に値上げする方式が多く見られます。
そのため、原材料費の値上がりや人件費の上昇など、企業が商品を製造したり、サービスを提供するためのコストが上昇する一方で、企業が継続していくために必要な利益を確保しづらい状態になっていると言えるでしょう。
良い物価上昇と悪い物価上昇
金融や経済の世界では、良いインフレと悪いインフレがあるとされています。良いインフレとは、消費者が商品やサービスを購入する意欲が旺盛なため需要が増え、結果として物価が上昇することを指します。
需要が増えると、価格が高くても売れるということでもあります。売り手としては100円で売り切れるなら、110円に値上げしてみる。それでも売り切れるなら120円にするなど値上げを繰り返し、売り切れになるギリギリの価格設定を目指します。
企業側としては値上げして売れた場合は利幅が増えますから、社員の給料に反映させたり、設備を増やしたり、研究開発に資金を投じることができます。その結果、給料の増えた社員は消費を増やし、新しい設備で効率よく生産できるようにし、研究開発でより良い商品を開発する好循環を生み出すことができます。
悪いインフレとは何でしょう。商品の仕入れ価格が上昇し、仕方なく商品価格を上げざるを得ないような状況です。商品性は変わらず、人気も変わらない場合、商品価格だけ値上がりすれば、買い控えが起きるでしょう。需要が増えない状態で、物価が上昇すると、消費を断念したり、安価な代替品を購入する人が増えます。企業側としては売上が下がり、商品製造やサービス提供コストが上昇しますから、利幅が減ります。
利幅が減れば、社員の雇用条件が悪化し、設備投資ができず、研究開発もできません。安い給料、老朽化した設備で、前と変わらぬ商品を作り続けることになります。これでは企業の継続性に疑問符が付くでしょう。利益を捻出するために、残業代を減らしたり、社員をリストラするなどして、働く環境が悪くなります。給料が減れば消費を控えますから、社会全体の景気が悪くなっていきます。