プロ60年目にもたらされた栄誉に「これまでやってきたことが認められたのかなと…。光栄です」と感慨深げに語った。
愛知県から師匠の木谷実九段に内弟子として入門したのが、9歳のとき。先輩に大竹英雄名誉碁聖、同世代に加藤正夫名誉王座ら、のちに日本囲碁界の中心で活躍する面々と鍛錬する日々を過ごした。
昭和46年、七大タイトルの一つである本因坊を史上最年少(当時)の22歳で奪取。以降5連覇で「二十四世本因坊」を名乗る資格を得たが、印象深いのは初防衛がかかった47年のシリーズだという。「防衛できたら独立を許可する-と師匠に言われていたので、プレッシャーがかかっていた。2勝3敗と追い込まれて、〝もう独立は無理だな〟とふっきれたことが、逆に良い結果につながったのかも」と当時を鮮明に思い返す。
形勢判断の確かさから「コンピューター」と称される。「石の形や気合、流れが重く見られた時代(昭和40年代後半)に、感情的にならず冷静に分析することから付けてもらったよう。人間的ではない-との意味あいもあるが、気にいっている」。それでも、昨今のAI(人工知能)搭載ソフトにならった打ち方が主流の風潮には「ポッと出てきたものに人間が負けるのは情けないし、(盤上に表れる)絵としてもおもしろくない」とも。
77歳での1200勝を目指す。4月29日現在、1144勝724敗1無勝負。「頑張れば、ぎりぎり達成できるかな。囲碁はわからないことだらけ。わからないなかで答えに近いものを探すのがプロの神髄」と、探究心は衰えない。