高齢者らデジタルに不慣れな人向けに講座を開くなどして支援する政府の「デジタル推進委員」の制度の概要が26日までに分かった。任期は原則1年で5月下旬から募集を開始。専門家による研修を経てデジタル庁が認定する。推進委員は、岸田文雄首相の掲げる「誰ひとり取り残されないデジタル化」の実現に向けた柱で、全国1万人以上を配置する方針を昨年表明していた。
推進委員の募集要項案によると、推進委員は本人や所属企業・団体からのオンライン申請に基づいて牧島かれんデジタル相が任命する。高齢者ら向けに交通費などを除いて無償で講習会を開催し、スマートフォンなどデジタル機器の使い方やマイナンバーカードを保険証として利用するための登録方法などデジタル関連政策の活用の仕方などを教えることを求める。無給で任期は1年だが原則、自動更新とする。デジタル庁が認定証として画像データを付与する。推進委員間で、講習会の開催方法などの知見を情報共有できる専用サイトを6月以降に立ち上げる予定。
推進委員になるためには、総務省が令和3年度に始めた携帯電話ショップなどでスマートフォンの利用法などを教える「デジタル活用支援推進事業」の講師向け講習を受けることや、厚生労働省の「障害者ICTサポート総合推進事業」で活動実績があることなど、これまでの官民のさまざまなデジタル弱者の支援事業に関わってきたことが条件となる。
ただ、厳しい認定条件とはせずに幅広く認定することで国民運動として推進委員を認識してもらい、目標の1万人を大きく超える任命を目指す方針だ。
牧島氏は26日デジタル庁で、日本青年会議所などの経済3団体に対して「デジタルを身近に感じたいという願いをかなえる社会を作るために、デジタル庁だけでなく、民間や地域の協力もお願いしたい」と述べ、推進委員への協力を呼びかけた。
推進委員は、政府の地域活性化策「デジタル田園都市国家構想」でも掲げられた岸田首相の肝いりの政策で、昨年から制度整備が進められてきた。デジタル庁は5月下旬の募集開始に向けて、募集要項案の見直しや各種団体や企業に対する登録要請などを進めるとみられる。