eスポーツによる集中力アップを個別に検知 ゲーム依存予防にも 熊本大大学院・九産大が論文

    HRVが個別測定に使える可能性

    モニタリングの手法として用いたのが、自律神経系の変動を体に負担を与えずに測定できる心拍数変動(HRV)指標だ。循環器疾患の診断やストレス、居眠りや情動など精神状態の計測にも用いられ、最近の研究では認知機能との関連性も報告されている。実験では独自に開発した装着可能な測定器を使い、HRV指標とeスポーツによる認知機能向上との関連性を調べた。

    HRV指標の計測に使用した独のウェアラブルデバイス(左)と計測結果が表示されたスマートフォンのアプリ画面(出典:「Heart Rate Variability Indices May Change Accompanying Cognitive Skills Improvement in eSports Tasks」久恒和希、 大槻寿英、磯貝浩久、萩原悟一、山川俊貴 著 Journal Of Digital Life.2022.2.4)
    HRV指標の計測に使用した独のウェアラブルデバイス(左)と計測結果が表示されたスマートフォンのアプリ画面(出典:「Heart Rate Variability Indices May Change Accompanying Cognitive Skills Improvement in eSports Tasks」久恒和希、 大槻寿英、磯貝浩久、萩原悟一、山川俊貴 著 Journal Of Digital Life.2022.2.4)

    20人の被験者を10人ずつ「訓練群」と「非訓練群」に分類。それぞれに認知機能を測定する「ストループテスト」を実施する前に、訓練群はレーシング系のeスポーツ課題である「マリオカート8デラックス」を1日1時間以上、週に5日以上、6週間継続して行った。

    「ST」は紙版のストループテストで「STapp」はアプリ版のストループテスト。訓練前後とeスポーツ課題の前後でこのテストを用いて認知機能を計測した。並行して実験中は継続的にウェアラブル機器によるHRV指標の計測も行った(出典:「Heart Rate Variability Indices May Change Accompanying Cognitive Skills Improvement in eSports Tasks」久恒和希、 大槻寿英、磯貝浩久、萩原悟一、山川俊貴 著 Journal Of Digital Life.2022.2.4)
    「ST」は紙版のストループテストで「STapp」はアプリ版のストループテスト。訓練前後とeスポーツ課題の前後でこのテストを用いて認知機能を計測した。並行して実験中は継続的にウェアラブル機器によるHRV指標の計測も行った(出典:「Heart Rate Variability Indices May Change Accompanying Cognitive Skills Improvement in eSports Tasks」久恒和希、 大槻寿英、磯貝浩久、萩原悟一、山川俊貴 著 Journal Of Digital Life.2022.2.4)

    その結果、最後のSTapp(アプリ版のストループテスト)で計測された指標(反応時間)が訓練群で有意に改善しており、萩原悟一准教授らの研究報告と同じく、認知機能の一時的な向上を示唆する結果が得られた。

    特に、改善度合いが大きかった上位10人と、それ以外の10人のHRV指標を群間比較したところ、上位10人では「SDNN」と「RMSSD」という2つの副交感神経系の指標が有意に高いことが分かった。

    山川准教授らは「これらの指標の変化は、eスポーツにより脳の前頭葉が活性化され、抑制機能が高まったことによるものと推察できる」と指摘。「さらに研究が進めば、eスポーツによる認知機能が向上するタイミングを検知・予測するウェアラブルシステムの開発も期待でき、ひいてはゲーム依存の予防やeスポーツの応用分野の拡大に寄与する可能性がある」としている。

    研究は山川准教授のほか、九州産業大学人間科学部スポーツ健康科学科の磯貝浩久教授、同大人間科学部の萩原悟一准教授、熊本大学大学院の久恒和希氏、大槻寿英氏と共同で進められた。

    ◆論文の詳細はこちらから


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