米国ではWaymo(ウェイモ)など多くの自動車メーカーが公道で自動運転システム(ADS)搭載車の走行を行っているが、乗員保護については明確な規則がこれまで存在しなかった。このため、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は3月30日、官報に「自動運転システム搭載車の乗員保護について」と題する連邦自動車安全基準最終規則を策定し公表した。
NHTSAは、エアバッグや衝突安全性など数多くの規則を制定してきたが、今回は苦悩に満ちたものであったと思われる。その最大の理由は、ドライバーによる手動操作がない車が実証試験車として登場したため、このような新タイプの車に対して新たな基準を作らざるを得なかったことにある。
その結果、NHTSAは時期尚早との声もあるものの、不確実性が存在しつづけていることを認識した上で、この時期に規則を確定させることが適切との判断に至ったようだ。
最終規則では従来では見られない要件が数多く規定されている。例えば、ハンドルがない車が存在することから、運転席の定義を「手動で操作する運転装置にすぐにアクセスできる指定された座席位置」としている。それ以外でも、ADS搭載車は1台当たり約1000ドル(約12万1000円)のコスト低減が図れると予想している。これまでADS搭載車といえどもハンドルがあることが前提で、ドライバーがハンドルから手を離しても運転可能なものぐらいな感覚だった。今回はもう一段踏み込んでハンドルがない車への最終規則が示されたことに敬意を表したい。
数年後には当該規則に基づいたADS搭載車が数多く出現するのではないだろうか。またNHTSA規則を一つの基準として各国で法制化が進むと予想される。(日本電動化研究所代表取締役 和田憲一郎)