新型コロナウイルス禍でオンライン授業が常態化し、学生の学力低下が懸念されるなか、東京大学教授らが学生の理解力向上を図る新たな機器を開発し、実用化されることになった。開発したのは、東京大学研究室のほか、特定非営利活動法人IoTメディアラボラトリー(東京都台東区、西和彦理事長)とシステムジャパン(同中央区、七里芳輝代表取締役)の3者。3月下旬には、都内で3者が会見し、その効果などを明らかにした。
開発した機器の名称は「がってんボタン」。使い方は簡単だ。オンライン授業に臨む学生は、パソコン脇にUSBケーブルで接続したがってんボタンを設置。学生が、がってんボタンにIDカードを取り付けて、出席を告知して授業がスタートする。
先生は自身のパソコンモニターで学生の出欠などを確認できる。講義を進行し、その度に学生に「分かりましたか」と問いかけると、理解できた学生は「がってん!」とばかりに、ボタンをたたくと、先生側のモニターに〝がってんサイン〟が点灯、学生がボタンを押す速度までがモニターに記録される仕組みだ。
開発に関わった東大工学系研究科機械工学専攻の中尾政之教授は、「東大でもオンライン授業を行っているが、学生がどこまで理解したかがなかなか伝わってこない。がってんボタンを使えば、下を向いている学生も理解してくれていることが分かる。言葉や表情では伝わらない授業に関する関心度、やる気も上げてくれる」と話す。
がってんボタンには、非接触で呼吸や脈拍などを計測できる非接触型バイタルセンサーが搭載されている。ボタンの前から学生が離れると、体動が途絶え、出席サインが消滅するため、先生は学生の理解度だけでなく、存在自体をチエックできる。
非接触型バイタルセンサーはシステムジャパンが開発し、介護などの分野ですでに商品化している。東大研究室は、オンライン授業で学生の理解度を深めるには、学生に何らかのアクションを起こさせることが効果的との実証を得て、がってんボタンの開発につながった。
アスキー創業者としても知られる西氏によると、「ボタンを押す動作で集中力を高める」効果も期待できるという。その効果は、どの程度なのか。西氏が学園長を務める須磨学園中学校・高校(神戸市須磨区)で、令和2年、3年にボタンの試作品(50個)による実験を実施。ボタンを使った学生と、使っていない学生に同じ試験を行ったところ、ボタンを使った学生の方が20%点数が良かったという。
西氏は「魔法のボタン」と評価。須磨学園では4月からの新学期に、がってんボタン100台を導入する予定という。