知財ビジネス

    関心薄い中小企業 支援機関・人材から動かす

    経済安全保障が注目され、知的財産流出や特許出願を非公開にする制度に関心を持つ中小企業や地方自治体の関係者が増えている。一方、中小企業に知財は関係ないと思い込み、利点に気づかない上に「難解だ」と敬遠するところもいまだに多い。

    「そこへどうアプローチしていくかが、最大の課題」と語るのは、特許庁傘下で知財総合支援窓口を運営する工業所有権・情報研修館の岩谷一臣・知財活用支援センター長だ。同研修館は今年に入って中小企業を支援する団体・機関である全国中小企業振興機関協会、日本商工会議所、中小企業基盤整備機構(中小機構)などと連携協定を相次ぎ締結。中小企業の知財支援の強化を進めている。

    支援機関で活動する人材は士業やコンサルタントの肩書を持ち、経営者との面談機会も多いため、中小企業への高い訴求力を持つ。例えば、大企業が下請け企業からノウハウを聞き出し、無断使用や特許出願をしているケースがある。こうしたケースについての助言を支援機関の下請け企業向け相談の中に加えるだけで、注意喚起になる。問題が発見された場合は、知財総合支援窓口の専門相談員につないで本格的な対策を講じられる。したがって支援人材の知財知識の習得や知財マインドの醸成は重要になる。同研修館は支援人材用研修の開催を検討する。

    中小機構などの支援人材としても活動するコンサルティング会社、ディスプロ(東京都練馬区)の桑原良弘社長は「3年ほど前から草の根的にだが、一部地域で支援人材向け知財研修は進められてきた」と話す。その一つ中国地区では、中国経済産業局が今年2月に支援人材向けセミナーを開催した。同経産局運営の知財学習サイトで公開中の研修動画を組み込んだカリキュラムの策定、発表などの実習を通じ、中小企業への指導方法を学ぶ内容だ。

    知財専門の相談員が経営を学ぶ必要性もかねてから指摘されている。支援機関との連携や、支援人材の協力でどんな効果が生まれるかが注目される。

    (中岡浩) ◇

    なかおか・ひろし 法大法卒。金融専門紙記者、金融技術の研究を行う財団法人などを経て、知的財産に関する国内最大の専門見本市「特許・情報フェア&コンファレンス」の企画や、知財に関する企業取材に従事。ジャーナリスト。高知県出身。


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