これまで徹底した「アンチデジタル」の姿勢をとってきたジャニーズ事務所。しかし21世紀以降、その経営戦略に変化が生じている。この連載では、稀代のエンターテインメント企業であるジャニーズが「インターネット」というメディアにどう向き合ってきたのかを中心に、ここ数年の変遷を分析していく。
ジャニーズ事務所が、所属するアーティストの「インターネット上への露出」に対して、長いあいだNGを貫いていたことはよく知られている。その姿勢は徹底しており、ファンによる無断UPの禁止は当然だろうが、たとえば、新番組などの宣伝のためにおこなわれる取材においても、TVや紙媒体がそこで撮影された素材を自社のニュース・サイトなどに転載することを許可しなかった。ネット・メディアが一般的になった2000年代後半以降は、ジャニーズ・タレントが写っているものと写っていないものの二種類の集合写真を撮っておく、という対策が取られたりもしていたという。
また、『Myojo』や『ザテレビジョン』といった雑誌に登場するジャニーズは、ネット上ではそのイメージを削除された状態で掲載されていた。Amazonや楽天ブックスといったECサイトに挙がっている商品ページを見ると、表紙写真の人影がグレーで塗りつぶされていたのである。かなり異様な画像であった(ネット民のあいだではこの現象は「かまいたちの夜」と呼ばれていた。ご興味ある方は検索をお試しください)。
このような状況が変化し始めたのが、2017〜18年のことである。17年の4月に宣材写真のSNSへの使用が解禁、18年の1月には、限定的ではあるが取材時の写真などのサイト掲載もOKが出され、ほぼ同時に「ジャニーズJr.」の最新動画を配信する公式YouTubeチャンネルが開設される(同年3月)。
HiHi Jets、東京B少年(現:美 少年)、SixTONES、Snow Man、Travis Japanという、デビュー以前の、まだ地上波などへの露出が少なかった「ジャニーズJr.」グループの映像が、このチャンネルの開設によりほぼ日替わりで見ることが可能になったのである。この展開に驚いたファンも多かったと思う。それまでネット上でゼロだった情報が一挙に無限大になったほどの変化であり、まさしくデジタルなビッグバンであった。