東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが東電と国に損害賠償を求めた3つの集団訴訟をめぐり、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は、東電側の上告を退ける決定をした。2日付。裁判官4人全員一致の結論。2審判決のうち、原告計約3600人に総額約14億円の支払いを命じた部分が確定した。各地で起きている同種の集団訴訟で、東電の賠償責任が確定するのは初めて。
また同小法廷は2日付で、原告と国から意見を聞く弁論を、4月中に開くと決めた。高裁段階で判断が分かれた国の責任をめぐり、今夏にも統一判断が示される見通しとなった。
3訴訟は、福島県や隣接県の被災者が起こした「福島訴訟」と千葉県に避難した人でつくる「千葉訴訟」、群馬県への避難者らによる「群馬訴訟」。東電と国が巨大津波を予見し事故を回避できたか▽国は東電に安全対策をとらせる権限があったか▽国の基準「中間指針」に基づく東電の賠償は妥当か-が主な争点。
2審ではそれぞれ、避難生活による生活基盤の喪失・変容に伴う精神的苦痛などを認め、国の指針を上回る額の賠償を命じた。確定した賠償額の内訳は、福島訴訟の原告約3550人に約10億1000万円▽群馬訴訟の90人に約1億2000万円▽千葉訴訟の43人に約2億7000万円。
国の責任をめぐる上告審の弁論期日は、千葉訴訟が4月15日、群馬訴訟が同22日、福島訴訟が同25日。賠償額の国と東電の負担割合は、最高裁の判断を経て最終的に決まる見込み。
福島訴訟をめぐっては令和2年9月、仙台高裁が高裁段階で初めて東電に加え国の責任を認めて賠償を命じる判決を出した。千葉訴訟でも昨年2月、東京高裁で国と東電の責任を認める判決が出たが、1審前橋地裁で国と東電の責任が認められていた群馬訴訟では、東京高裁が昨年1月、国の責任を否定し東電のみに賠償を命じる判決を出した。
東電は「(高裁の)判決に従い原告の皆さまに対応する。引き続き、福島への責任を果たすべく、誠実に対応していく」とコメントした。