「まだ現役」電波天文学の草分け、野辺山宇宙電波観測所が40周年

    国立天文台野辺山宇宙電波観測所。右から3番目の遠方に見えるのが45メートル電波望遠鏡=長野県南牧村(野辺山宇宙電波観測所提供)
    国立天文台野辺山宇宙電波観測所。右から3番目の遠方に見えるのが45メートル電波望遠鏡=長野県南牧村(野辺山宇宙電波観測所提供)

    長野県南牧村にある国立天文台の野辺山宇宙電波観測所が3月1日に開所40周年を迎えた。銀河の中心に巨大ブラックホールが存在することを世界で初めて証明した名機だが、今や最新鋭は南米のアルマ望遠鏡などに譲る。それでも、視野の広さなど特長を生かして天文学に貢献し続ける。昨年は財政支援を目的としたクラウドファンディング(CF)などで700万円超の寄付が集まり、人気の健在ぶりも示した。先達としてまだまだ天文学を引っ張る気概だ。

    最高の立地

    新型コロナウイルス禍中で40周年を迎えるにあたり、2月上旬、オンラインで記念式典が開かれた。観測所OBや建設に関わったメーカーの技術者らが参加し、話は昭和57年の開所前、立地選定までさかのぼった。

    総工費110億円は、当時の基礎科学としては最大規模。北海道、栃木・那須高原、山梨・富士ケ嶺なども検討した上で、気候条件や規制などから、本州にありながらミリ波観測に有効な低気温である南牧村の野辺山に決定されたという。元所長の研究者OBからは、計算結果を出力するプリンターが紙詰まりを起こすので、そのそばで寝たという思い出など、昔話に花が咲いた。

    同観測所の45メートル電波望遠鏡は1990年代、りょうけん座にあるM106銀河の中心でガスが予想以上に高速回転していることを捉え、それをもとにブラックホールの存在を実証するなど、日本の電波天文学を切り開いた。その伝統は、日米欧などが協力し2011年にチリの5千メートルの高地に誕生したアルマ望遠鏡へと続く。

    アルマ望遠鏡は、多数の望遠鏡を組み合わせて実効的に最大直径16キロの望遠鏡を構成し、遠くにある天体が発する電波を高分解能で観測する。一方、野辺山観測所の45メートル望遠鏡は視野が広く、観測標的の探索に最適。同観測所や大阪府立大などのチームは、重水素分子の分布から星が生まれるところを探る新受信機を来年度に搭載予定で、立松健一所長は「予定通りにいくと、世界をぶっちぎる」と話す。


    Recommend

    Biz Plus