プロの職人向けでコストパフォーマンスに定評のある作業服・関連用品の専門店「ワークマン」がキャンプ市場に本格参入した。テントや寝袋などの基本アイテムから焚き火用品まで、合計130アイテムを22日から一挙に展開。ワークマンならではの品質とリーズナブルな価格を強みにビギナー層の取り込みを狙う。キャンプブームが叫ばれて久しいなか、「ワークマンがいま参入?」といぶかる向きもあるが、同社の土屋哲雄・専務取締役は「その“周回遅れ”が当社の強みとする『ユーザーイノベーション』を生む」という。
「声のする方に進化する」
作業用ウェアの市場でトップの売り上げを誇る一方、2016年に立ち上げた一般向けのプライベートブランド(PB)がヒットし、話題となったワークマン。2018年にはスポーツウェアに特化した店舗「ワークマンプラス」をオープンし、2020年には「#ワークマン女子」といった女性をターゲットとした店舗を展開してきた。アウトドアブームを追い風に、PBアウトドアウェアの売り上げは2019年からの2年間で約4倍の516億円にまで拡大した。
「実はキャンプギアに関しても4~5年前からニーズはあった」という土屋氏。ここ数年は「業態変化による急成長でキャンプ部門に注力できなかった」との事情もあったようだが、商品開発を進める準備期間にもなったという。
開発過程で特に力を入れてきたのが、同社が「消費者の声の中央値」と考えるアンバサダーの声を生かしたマーケティングだ。商品開発に係わっている公式アンバサダーはワークマンの“ファン”であり、ユーチューバー等各分野で精通・活躍している面々。契約料等での囲い込みはせず、その分「欠点に対する指摘も含め、リアルな品評を交えながらフィードバックをいただいている」(土屋氏)という。
同社によると、現在展開中の全PB製品の3分の1がアンバサダーの開発協力によるもので、売り上げの8割を稼ぎ出しているという。こうした消費者の声から生まれた製品(ユーザーイノベーション)に対する同社の評価は高く、「将来的に全PBの半数をアンバサダー開発協力製品にしたい」というほど手応えを感じている。
力の入れようは、現在40人いるアンバサダーのうちの15人がキャンプ分野に携わっていることからも分かる。消費者の声を聞くためにはある程度市場が醸成される期間が必要となるが、「『声のする方に進化する』のが同社のモットー」という土屋氏。求められているサービスにワークマンとして答えを出す。それに伴う出足の遅さは、周回遅れのようにも見えるが「必然」だという。