昨年末にトヨタ自動車が2030(令和12)年までに電気自動車(EV)の年間世界販売台数を350万台に引き上げると表明して以降、EVの話題が一気に増えてきた。そこでよく問われるのがライフサイクルアセスメント(LCA)である。
自動車であれば、製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取・精製~原料生産~製品生産~走行~廃棄・リサイクル)の二酸化炭素(CO2)総排出量の定量的評価である。例えば、ガソリン車とEVでは石油採掘や精製過程、発電方法、走行などによってCO2排出量が大きく異なる。地域ごとにLCAの値が異なるため、正確なLCA評価をすることが大切となってくる。
欧州連合(EU)では、欧州委員会により「自動車LCA報告書」が20年7月に発行された。多くの専門家の知見やデータを集め、約500ページの報告書として取りまとめたものである。既に欧州議会はEU共通の評価方法が可能か23年までに検討し、適切だと認められた場合は法制化することを承認している。このように欧州ではLCAについて一つの基準ができつつある。
一方、日本では経済産業省が、22年に入り、車両としてではなく、まずEV用蓄電池に関してCO2排出量を示す仕組みを作ると公表した。仕組み作りのためEV用蓄電池を優先し、その成果を他製品に展開する考えである。EV用蓄電池を優先したことは理解するが、完成した後に車両全体を着手するとなると、さらに1、2年要するであろう。
論点となりやすい電源構成は、21年10月に30年度までの「エネルギー基本計画」が閣議決定されている。25年、30年を見据えて、日本におけるEVビジネスの基準を示すためにも、「日本版LCA」の着手時期に来ているのではないだろうか。(日本電動化研究所代表取締役 和田憲一郎)