天下の国営企業ですら経営難に…「恒大集団の破綻」でついに始まった中国の倒産ドミノ

    海外投資家への弁済は後回しになる恐れ

    もちろん日本の失われた10年とは異なる点もある。中国企業が海外市場で発行したオフショア債も償還が懸念されていることは各種メディアで報じられているとおりだ。問題をややこしくしているのは、中国国内で発行された社債よりも、オフショア債の弁済順位が低いことだろう。

    社債の分野には「クロス・デフォルト条項」と呼ばれる契約条項があり、どれかひとつの社債が債務不履行に陥れば、他の社債も担保を提供したり、償還を迫られるというものだが、中国市場の専門家によれば「中国企業のオフショア債は多くがその対象外」だという。

    つまり中国本土で発行された社債の投資家は優先的に弁済を受けるが、オフショア債の海外投資家は後回しになる恐れがあるのだ。その点で中国政府の対応は場当たり的で、企業の経営破綻や債務不履行を制御できていないように見える。

    中国政府は社債問題を素早く収拾できるのか

    中国の社債問題は、日本でも国民生活の身近なところに影を落とし始めた。中国企業の社債を組み入れている投資信託は、昨秋あたりからその基準価格が下がり始めているのだ。それらには中国の不動産会社が発行した社債を積極的に組み入れた投信もあり、昨秋の時点で恒大の社債を組み入れた投信も数十銘柄に上る。

    企業再生は時間との闘いだという。経営破綻やその瀬戸際に追い詰められた企業は顧客が離散したり、ライバル企業の草刈り場になったりして商圏が縮小し、競争力や資産内容の劣化が進みやすく、時間をかければかけるほど再生が難しくなる。

    中国政府は恒大をはじめとする社債問題に対し、スピード感を持ちつつソフトランディングさせられるかどうか。しばしば強権的で強引な政策が目立つ中国政府に、それができるだろうか。

    山口 義正(やまぐち・よしまさ)

    ジャーナリスト

    1967年生まれ。 愛知県出身。法政大学法学部卒。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞社証券部記者などを経て、現在は経済ジャーナリスト。月刊誌『FACTA』でオリンパスの不透明な買収案件を暴き、第18回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞を受賞。 著書に『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)などがある。

    (ジャーナリスト 山口 義正)


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