湯治という伝統が古くから根付いている温泉大国の日本だが、「天然温泉」や「源泉かけ流し」の意味を理解している人が半数以下にとどまることが1日、旅行大手阪急交通社のアンケート調査で明らかになった。特に「源泉かけ流し」と似た「温泉かけ流し」について理解している人は2割だった。それぞれどんな意味があるのか。
阪急交通社が昨年12月下旬、全国の20代以上の男女554人に行ったアンケートでは、「温泉」という言葉の意味について「理解している」と回答した人は62.8%だった。温泉は地中から湧出する25度以上の鉱泉を指し、温泉法では、指定された19の特定成分のいずれかを一定量以上含むものが「温泉」と定義される。こう言われるとなんだか複雑だが、要は特定成分を含み湧出する水が鉱泉で、温度が25度以上あれば「温泉」ということになるようだ。
「天然温泉」と「温泉」の違いは何なのか。同社によると、温泉法で定義された「温泉」と意味は同じで、温泉成分などを追加して作った「人工温泉」などと区別する形で使われているのだという。日本温泉協会の審査で「天然温泉」と認められた温泉には、天然温泉表示看板が貸与される。天然温泉について理解している人は44.9%だった。
問題はここから。「源泉かけ流し」について理解している人は38.4%、「温泉かけ流し」に至っては21.7%だった。何がどう違うのか。「源泉かけ流し」とは、その名の通り、源泉が浴槽に常時注入され、あふれた湯が再利用されない状態のことを指すという。さすがに「源泉」というだけあって、温泉以外の加水は基本的には認められない。加温は可能だが、状況や理由の提示が義務付けられているという。
これに対し、「温泉かけ流し」という場合は、加水も加温も可能なのだそうだ。ただし、こちらも状況や理由の提示が義務付けられている。「源泉かけ流し」と銘打たれた湯であれば、一般的に良い印象を抱くものだが、実際の意味もその印象の通りであることが分かる。
ちなみに、「日本三名泉」として知られる有馬温泉(兵庫県)、草津温泉(群馬県)、下呂温泉(岐阜県)がそれぞれどの都道府県にあるか知っているかとの質問では、草津温泉の知名度が特に高く、80.5%の人が「知っている」と回答。有馬温泉と下呂温泉はそれぞれ71.7%、71.8%と拮抗(きっこう)した。
阪急交通社は「温泉が看板に掲げる『天然温泉』『源泉かけ流し』などの定義をきちんと知っていれば、より旅行先の温泉を選ぶのが楽しくなるかもしれません。温泉地のたくさんある北海道、湧出量日本一の大分県などでは、源泉かけ流しの温泉がある宿も見つけやすいでしょう」としている。