九電、子会社の契約〝肩代わり〟 市場価格高騰、窮余の策

    記者会見する九州電力の中野隆業務本部長(左)=31日、福岡市中央区
    記者会見する九州電力の中野隆業務本部長(左)=31日、福岡市中央区

    日本卸電力取引所(JEPX)での取引価格が高止まりし、大手電力会社の経営にも具体的な影響を与えつつある。首都圏などで電力小売り事業を行う九州電力の子会社、九電みらいエナジーは、自社が抱える業務用大口契約の一部を更新せず、九電本体に切り替え始めた。販売する電力をJEPXからの調達に頼っており、価格高騰の影響を避けるための窮余の策だ。子会社の収益悪化を、親会社が「肩代わり」する構図ともいえ、電力事業を取り巻く厳しい環境を象徴する動きだ。

    「経営規模などを考慮し、上半期から徐々に戦略的に対応している」。31日、九電の中野隆業務本部長は、九電みらいの業務用大口契約について九電本体へ切り替えを進めていることを明かした上で、こう述べた。

    九電みらいは令和元年4~12月期で約20億キロワット時だった販売量を、2年同期には約43億キロワット時と倍増させ、九電グループ全体販売量の約7%を占めるまでになっていた。ただ、3年同期の販売量は約44億キロワット時とほぼ横ばいにとどまった。

    自前の電源を持たない九電みらいは、販売電力の調達をJEPXに大きく依存していた。市場価格が高騰すると、販売先が大口であればあるほど赤字となる構図で、昨冬も価格高騰で大幅な収益悪化に陥った。

    小売り以外に再生可能エネルギー開発も担う九電みらいの財務状況が損なわれることは、九電グループ全体の再エネ開発戦略に影響を与えかねない。九電みらいは、従来のJEPXに依存した事業体制を見直し、相対契約など市場外での調達を増やしている。それでも収益構造の厳しさは変わらず、九電本体への契約切り替えを選択した。需要家保護に加え、グループの将来も見据えたものだ。


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