特撮映画に登場する架空の怪獣「キングギドラ」のように体が分岐した新種の動物を佐渡島近海で発見したと、東京大などの国際研究チームが20日、発表した。
研究チームは佐渡島南部の浅海を潜水調査し、水深十数メートルの岩場で採集したカイメン内部から新種を発見した。新種は、ミミズやヒル、ゴカイのように体節で区切られた細長い体を持つ環形動物の一種。体幹部が分岐する特異な性質から、キングギドラにちなんで「キングギドラシリス」と名付けた。シリスはゴカイの仲間の総称。
3つの頭を持つキングギドラとは違って頭部は1つで、尾部に向かって幾度も分岐している。分岐したそれぞれの尾が消化や生殖の機能を持っているとみられる。
海底の岩などに付着しているカイメンを宿主にしており、分岐によってカイメンの体内で縦横無尽に体をめぐらせ、カイメン表面の穴から無数の尾を伸ばして、栄養吸収や繁殖の効率を向上させていると考えられる。
体幹部が分岐するシリスはかつて日本近海で「カラクサシリス」という種が報告されているが、この種はここ数十年発見されていないという。キングギドラシリスは佐渡島だけでなく、隠岐や太平洋側にも生息している可能性がある。
東京大・附属臨海実験所(神奈川県三浦市)の三浦徹教授(進化動物学)は「キングギドラシリスは、動物の体ができる仕組みのパターンから逸脱している。こうした種が日本近海で採集できれば、発生のメカニズムに迫る研究が進むかもしれない」と話した。