ダイハツ工業は14日、千葉市美浜区の幕張メッセで開幕したカスタムカーや関連部品の見本市「東京オートサロン2022」に出展し、軽ワンボックス車「アトレーデッキバン」のコンセプトモデルを披露した。車体後部の短いオープンデッキ(屋根のない荷台)にバスタブ、さらにルーフの上にはテントを備えたキャンパー仕様で、「世界最小の4LDK」というユニークな車両だ。制作の背景には新型コロナウイルス禍や災害時の問題に対応したいという真面目な考えも反映されている。
「追いだきができれば完璧だ」
14日のオートサロンの会場では来場者からこんな声が漏れた。カスタムカーの祭典には似つかわしくない言葉だが、実際に「アトレーデッキバン キャンパーver.」を目にすれば、そうこぼしてしまうのもうなずけるだろう。ベースになった車両のオープンデッキに設置されたバスタブには、自然の中での開放的な入浴を想像させるインパクトがある。
企画した同社デザイン部第一デザイン室の米山知良さんは「どこに行っても露天風呂を楽しめるのでは」と話す。キャンプ中にバスタブにためるだけのお湯を調達するのは簡単ではないとはいえ、アウトドアレジャーでの汗をさっぱり洗い流してからルーフ上のテントで“車上泊”するイメージで制作したという。このバスタブとテントに、運転席、荷物を積む後部座席を合わせた4つのスペースに4つの機能を持たせたことから、「世界最小の4LDK」だとしている。
開発のきっかけのひとつは新型コロナ禍の中で、「3密」を避けるレジャーとしてキャンプの人気が高まったこと。また、こうしたキャンプ人気に乗ろうというだけではない、別の理由もあるという。
「うちのデザインチームの担当者が自宅でテレワークを続けることにつらさを感じるようになり、いろいろな場所で仕事ができるようにしたいと考えたのも、このコンセプトカーが生まれるきっかけになりました」(同社広報)
自動車メーカーでの仕事の悩みを解決する方法が、自動車を使って仕事場ごと生活空間を移動可能にすることだったというわけだ。デザイナーたちの“自動車愛”がにじみ出たコンセプトカーといえる。
バスタブの設置については、災害時にお風呂に入れない問題を個人所有の自動車で解消したいという思いも込められている。米山さんは「冗談のように見えるかもしれませんが、本気で取り組んでいます」と胸を張った。
東京オートサロンは16日まで。昨年はコロナ禍を受けて会場での開催を見合わせてオンラインで情報を配信した。各社が会場で製品をお披露目する形式は2年ぶりとなる。