山梨県初となる現役競走馬の休養牧場が本格的に始動した。北杜市高根町清里の牧場施設「ホースブリッジ」で、現役競走馬用の新しい厩舎(きゅうしゃ)が完成し収容態勢が整った。「現役競走馬の高原リゾート」をキャッチフレーズに、標高1150メートルにある清里高原を新たな休養牧場として定着させ、かつて若い女性が大挙して押し寄せた清里高原の再興を目指す。
総工費1・5億円
ホースブリッジの新厩舎は木造平屋で、52の馬房を用意した。1つの馬房は3・2メートル四方で、ゆったりとしたスペースを確保している。窓もついており、競走馬が顔を出した様子を、外から観光客らが見ることができる。
厩舎内には6頭分のシャワールームや体重測定所に加え、馬に赤外線にあて筋肉の疲労などを改善させるソラリウム治療機を2機導入した。近く、ドイツ製の競走馬用ランニングマシン「トレッドミル」を設置するなど、最新の設備を備える。新厩舎の総工費は約1億5千万円になる。
新型コロナが背を押す
ホースブリッジの前身である小須田牧場は、清里で初めての牧場民宿を始め、その後、馬を使った観光牧場を営んできた。さらに、競走馬の輸送事業に参入し、輸送頭数はグループを含め年間で7千頭。平成28年に小須田牧代表が、ホースブリッジを立ち上げ、競走馬を乗馬用に再訓練する事業に乗り出すなど、馬に関わる事業での実績を積んできた。
小須田氏が地方競馬の調教師など競馬関係者と交流を深めていく中で、引退馬の行き先や、休養先が足りないといった要望を聞き、休養牧場事業への思いを強くしていった。その思いを実現させたのは、皮肉にも新型コロナウイルスだった。
感染拡大で昨年から乗馬クラブの休業が相次ぎ、主力事業の1つであった乗馬用に再訓練した馬の出荷事業が急減。それをカバーする新たな収益源を検討する中で、事業化に踏み切ったのが休養牧場だった。