大阪市北区で17日午前に発生したビル火災では、負傷者28人のうち27人が心肺停止状態で搬送された。27人は出火した4階のクリニックに集中。負傷者の多くは一酸化炭素中毒の症状で搬送されたとみられ、専門家は「出入り口付近が激しく燃えたことで、クリニック内の酸素濃度が急低下したのではないか」と指摘している。
大阪府警や大阪市消防局などによると、ビルは鉄筋コンクリート造り8階建て。出火した4階は約95平方メートルあるが、火元とされるクリニックだけが入居していた。
火災では約25平方メートルを焼き、約25分後にほぼ消し止められたが、クリニックの入り口にある受付付近が激しく燃えていたとの情報がある。可燃性の液体などを使ったことで火が燃え広がった可能性があり、府警は放火の疑いで捜査している。
火災について詳しい東京理科大の水野雅之准教授(建築火災安全工学)は「ガソリンなどを使った場合、一気に燃え上がり、初期消火は難しくなる」と指摘した上で、「火の広がりが速い分、酸素濃度が下がり、一酸化炭素が発生するのも速い」と話す。
ビルのエレベーターや階段はいずれもビルの共有スペースにあり、クリニックの出入り口付近が火元だった場合、避難が困難だった可能性が高い。水野氏は「唯一の出入り口付近が燃焼し、逃げ場がなかったのではないか」と指摘する。
現場のビルは、道路側に窓が確認できるが、換気用でほとんど開閉せず、被害者は短時間で呼吸するのが困難な状態になったとみられる。
現場のビルは昭和45年に建てられ、築約50年が経過。ビル内に入ったことがあるという50代男性は「ビル自体は古く、エレベーターと階段ともに小さかった」と話していた。