最先端のファッションか、それとも一夜限りのパーティーアイテムか。欧米ではクリスマスシーズンの定番アイテムとなっている、レトロで、愉快で、味わい深いデザインの「ダサセーター」が日本でも一部の層の心をつかんでいる。「ダサセーターの日」と定められた12月第3金曜日(今年は17日)には、東京・渋谷で愛好者が集まるパーティーが開かれる予定で、認知度も徐々に高まりつつあるようだ。「ダサい」への見方が変われば、タンスの奥にしまった微妙な柄のセーターを大掃除で処分せず、思い切って着る機会が増えるかもしれない。
ネガティブワードが褒め言葉に
ダサいかダサくないかの感じ方は人それぞれ。だが、世に出回るダサセーターには、ファッションに興味を持ちだしたハイティーンが恥ずかしがって着たがらないような子供っぽいデザインのセーター、という共通点があるようだ。クリスマスを連想させる赤や緑のけばけばしい色づかいだったり、サンタやトナカイの柄が目立ちすぎていたり、クリスマスツリーのオーナメントのような派手な飾りがくっついていたりと、主張が強すぎるのも特徴だ。
「本来ファッションは自由なものだし、思いのままに着ればいいんです。ダサセーターは、そもそも『ダサい』からスタートしているので、きれいにまとめる必要はない。他人や社会の『かっこいい』に合わせなくていいんです。ダサくて当たり前。いや、ダサいことは褒め言葉になる」
イベント企画などを手掛ける「Afro&Co.」代表のアフロマンスさんは、ダサセーターの魅力をこう力説する。同社は今年の「ダサセーターの日」にあたる17日、渋谷で3回目の「ダサセーターパーティー」を開催する。ドレスコードはもちろんダサセーターだ。
「クリスマスのイベントではサンタやトナカイの格好をしている人を見かけますが、個性を出せる部分がほぼないんですよね。その点、ダサセーターはセーターというフォーマットの上にどんな表現でも載せられるので、十人十色になるのが面白い」
海外発祥のカルチャーだが日本で独自に進化した部分もあり、「日本語を入れると途端にダサくなるので、ダサさのスパイスとして入れることも多い気がします」(アフロマンスさん)。2019年のパーティーではクリスマス向けの服なのに、なぜか正月の鏡餅をモチーフにしたダサセーターを編んだツワモノもいたという。また、俳優の菅田将暉さんが着るような個性派ニットのブームを巻き込みながら、流行のファッションとして浸透していく向きもあり、必ずしも「ダサセーター=センスがない」というわけではないようだ。