SNS時代のマーケティング戦略 「おもてなし」も総点検を

    ※画像はイメージです(Getty Images)
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    【デジタル羅針盤】 生活の中でSNS(会員制交流サイト)に費やす時間が増えた。総務省の調査によると、10代、20代がSNSに費やす平均時間はテレビの約3倍だ。SNSが前提の生活スタイルといえる。50歳以上は逆にテレビの時間が約3倍だが、30代、40代では均衡しており、近い将来の動向が注目される。

    若者に対する企業のマーケティング戦略は、SNSでの情報発信が成否を握る。中高年に知名度があっても、若年層に知られていないことを懸念する企業も少なくない。客足が戻りつつある観光地や飲食店でも同様だ。観光地を選ぶ際、SNSでの情報を優先的に判断材料にしている可能性が高い。

    われわれが「あそこへ行ってみよう」と思い立つのは、画像や映像での紹介を見て、「自分も見たい」「体験したい」と考えるからだ。ガイドブックだと情報が限定的だが、SNSでは体験談がダイレクトに伝わるし、情報量も多い。だが、第三者からの情報発信が中心となるため、サービスの提供側が情報をコントロールするのは難しい。

    SNSでの情報発信に知恵を絞ることが重要だが、より本質的なことは実際に訪問した人たちに喜んでもらうことだ。美しい景色を楽しむことや、食事に舌鼓を打つことはもちろんだが、案内板の整備や訪問者を温かく迎えるといった客目線のサービスが必要だ。多くの人が訪れても、期待通りの体験ができなければ一時的なブームで終わってしまう。満足度が高ければ、また行ってみようという気持ちになり、周りの人たちに積極的に伝える。提供する側にも、サービスレベルを向上することに生きがいを持つ人が集まり、良い循環が生まれる。

    デジタル空間での情報伝達速度は早く、人気のある場所や店であっても油断は禁物だ。新型コロナウイルス禍の人の流れが止まったタイミングで、十分な活動をしてこなかったことに気付いた経営者も少なくない。リアルとデジタルの総点検を行い、より良い年を迎える準備を進めたい。(小塚裕史)

    【プロフィル】こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、平成31年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタルトランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。


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