知財ビジネス

    特許庁、デジタル化の進展でどう変わる?

    画像はイメージです/Getty Images
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    知財分野でデジタル化が進展している。特許庁は、令和4年1月中に新たな公報システムを立ち上げる。特許庁は、発明などを審査し、その独占権を与え、登録する機関だ。職員約2800人の約6割を占める特許審査官は理系大学・大学院出身者で、ITや人工知能(AI)の研究・開発経験者も数多い。

    公報は、特許庁へ権利化申請(出願)された内容や権利登録された内容を公開する媒体だ。インターネットを介して1週間に1度発行していたが、毎日発行に変更し、即時性を高める。同時に、公報のデータ提供形式を一気に変更するため、特許庁のデータを取り込んで利用ソフトとともに企業へ提供する国内特許情報サービス会社では、対応に混乱が生じているという。

    一方、同じ1月中に米ベンチャーのIPwe社がIBMと開発中の知財活用プラットフォームを公開する予定だ。世界の特許庁が提供する公報データを取り込み、AIを使い、特許を誰が使えばいくらの価値があるかを算出した上で、取引・契約・決済を行う。「ブロックチェーン」という、暗号資産(仮想通貨)で使われるデータ改竄(かいざん)が難しい記録技術を使っている。

    また、特定分野の製品や役務に使う特許の提供を募り、希望者にライセンスして共同利用する特許プールという仕組みのデジタル化を図り、発明の活用を進める。従来は、一般的に提供した特許の数でライセンス料を決定したが、AIが判定した特許の重要性や価値も考慮される。

    これらが普及すれば、世界の特許取引原簿となる可能性がある。実は、特許の売買が成立後も特許庁にある登録原簿の権利者名の変更手続きを放置しているケースが少なくない。将来、特許庁とシステム接続できれば、自動化も可能になる。

    審査と権利登録を行う特許庁だが、それ以外の部分のデジタル化を民間が最新技術で高度化した場合、特許庁のあり方や官民の関係ははどうなっていくのか、来年以降、気になるところである。

    (中岡浩)

    なかおか・ひろし 金融専門紙記者、金融技術の研究会を行う財団法人などを経て、知的財産に関する国内最大の専門見本市「特許・情報フェア&コンファレンス」など、主に知財に関する企業の取り組みなどの取材に従事。ジャーナリスト。高知県出身。


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