【モビリティー新時代】 米国の新興電気自動車(EV)メーカー「リビアン」がナスダックに上場し、EVピックアップトラックの「R1T」を出荷開始したことから話題となっている。日本にいるとあまりピックアップトラックはなじみがないが、米国では2020年の販売で、乗用車のカテゴリー比率が約24%へと低下し、逆に小型トラックに分類されるカテゴリーが約76%へと増加した。小型トラックカテゴリーにはバン、スポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラックなどが分類されるが、ピックアップトラックはその主要なポジションを占めている。
なぜいまEVピックアップトラックなのかと考えると、主に3つの理由があると考える。①米自動車販売が低迷する中で、小型トラック分野が毎年3%増以上と堅調な伸びを示しており、今後収益を上げようとすれば、新規性の高いEVピックアップが戦略ターゲットとなること②ZEV(ゼロエミッション車)規制が厳しさを増しており、クレジットを獲得するためには、打ち手としてEVピックアップトラックが適切であること③リビアンなど複数の新興EVメーカーがEVピックアップトラックに名乗りを上げていること-などだ。
このような環境もあり、既存のゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ステランティスも次々とEVピックアップトラックへの参入を表明している。テスラも建設中の新工場・ギガテキサスが稼働すれば、本格生産に移行するであろう。
ということはリビアンも安泰ではなく、〝ダーウィンの海〟に突入することを意味する。これは事業化されて市場に投入された新商品は、他企業との競争や真の顧客の受容という荒波にもまれ、生存競争の段階に突入することを表したものである。来年から本当の戦いの火蓋が切られるのであろう。(日本電動化研究所代表取締役 和田憲一郎)