アジアの今

ラオス、初の高速鉄道開通で中国傾斜加速

建設中の中老鉄路。資材、重機、人員全てが中国から持ち込まれた=2019年9月、ビエンチャン郊外
建設中の中老鉄路。資材、重機、人員全てが中国から持ち込まれた=2019年9月、ビエンチャン郊外

東南アジアの内陸国ラオスで初の高速鉄道が開通する。中国が事業費の多くを負担して建設した「中老鉄路」。雲南省昆明への乗り入れを前提に、国境の街ラオス北部県ボーテンから首都のビエンチャンを結ぶ約420キロの鉄路だ。開通日は社会主義国家ラオスの46回目の建国の日となる12月2日。中国などから来賓を招いて盛大に式典が開催される。

小国ラオスの鉄道建設がここまで注目されるのは、背後に中国の「一帯一路」が控えるからにほかならない。インド洋への経済覇権拡大を目指す中国にとって、ラオスとミャンマーを経由するルートの確保は欠かせない。ともに雲南省から鉄道を延伸させ、北京まで乗り入れさせる計画を持つ。安全保障もさることながら、貿易拡大が当面の狙いだ。

このうち、ミャンマー・ルートについては今年2月の国軍クーデターで先行きが見通せなくなった。ラオス・ルートがにわかに現実味を帯びるようになった。既にラオスの隣国タイとは中老鉄路をさらに延伸させ、ビエンチャンのメコン川対岸ノンカイから首都バンコクを結ぶ高速新線「タイ中高速鉄道」に接続させることで合意している。実現すれば、昆明までの約1650キロの長大な国際鉄道が完成する。経済的な優位性は揺るぎのないものとなる。

バンコクへの乗り入れは2028年ごろになるとされるが、それまではラオスまでトラック輸送で代替させる計画。タイからはコメや鶏肉、ドリアン、さらには中国料理で欠かせないツバメの巣などが中国向けに輸出される予定だ。中国14億人の胃袋を満たす新たな生命線の一つと位置づけられている。

一方、通過地点に陥る可能性の高いラオスだが、悲観はほとんど聞かれない。ダム建設など中国依存は高く、中国なしでは将来は語り得ないからだ。西側からは「債務のワナ」などと揶揄(やゆ)されるものの、代替策も支援もなく、声に耳を傾ける余裕もない。ひたすら中国傾斜を強めていくだけだ。

(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一、写真も)


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