自民党総裁選 “根拠なき熱狂”に踊らされない見方と主要候補の経済政策

自民党総裁選が熱い。その理由は簡単で、総裁は事実上、日本の首相総理大臣を決めることでもあるからだ。筆者は自民党の党員ではないので、総裁選自体は批評する観点から距離を置いてみている。しかしSNSなどで総裁選をめぐって発言すると、おそらく自民党党員でもないのに特定の候補者に「熱狂」している人たちに、「田中は××候補を推してる」と発言を適当に切り取られてしまう。ワイドショーの印象だけでモノゴトを判断する軽薄な人たちは多いが、ネットでも大差ない。筆者にとっては、特定の候補者を「推す」ことに意義はない。候補者たちの政策に関する発言を評価する方が重要である。

菅義偉首相の総裁選不出馬を伝える街頭ビジョン=3日午後、大阪市北区(須谷友郁撮影)
菅義偉首相の総裁選不出馬を伝える街頭ビジョン=3日午後、大阪市北区(須谷友郁撮影)

ただこの種の「熱狂」は、マスコミも例外ではない。根拠のない「熱狂」がある。たとえば、日本経済新聞では菅義偉政権崩壊で、「新政権への期待」で株価が上昇と説明していた。そもそも誰が次の首相・総裁なのか不明なのに「新政権への期待」もないだろう。むしろ低迷していた菅政権への支持率がもたらしていた与党の「選挙大敗リスク」が後退したと市場関係者が考えたのかもしれない。実際に各種世論調査では、自民党の支持率は大きく改善した。他方で、立憲民主党など野党は支持を大きく減らしている。

現状で、誰が次の自民党総裁になるのかはわからない。現時点(13日)での主要候補は、河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相だ。これに石破茂元幹事長や野田聖子幹事長代行らが絡んでくるのかどうかは現段階では不透明である。

世論調査では、河野氏の人気が高い。だが、世論調査の人気と実際の自民党党員、いわゆる地方票の支持とはまったく違う。後者については客観的なデータもないので、わからないとしかいえない。嘉悦大学の高橋洋一教授は独自の分析をして、各候補に有意な差はない、と指摘している。

各候補の政策をめぐる発言にも注意が必要だ。まだ総裁選の公示や投票まで時間がある。自民党という「保守」のカラーの中で、各候補は自らの旧来の印象や主張を修正し、あるいは補強することも十分にある。有力候補の打ち出した政策が魅力的であれば、それを自らも主張し「論点潰し」に出るかもしれない。または他候補との違いを強調する戦略に出るかもしれない。あくまで自民党の総裁候補としてどう言っているかであって、国民との公約を提起しているといった類いのものではない。総裁選の過程でもまれ、さらに実際の政権を担う際にまた意見が変化してもおかしくはない。

実際に、岸田氏は財務省的な緊縮政策のスタンスを否定する傾向が強く、また河野氏は過去の女系天皇容認の発言を修正し「保守」色をより強調している。高市氏は金融所得税の増税を打ち出していたが、批判が強まるやインフレ目標2%達成後に行うと意見を修正した。これらの各候補の意見修正・補強の動きが、今後も起きても不思議ではない。この点を踏まえて、各候補の主張を「熱狂」せずに見ることも重要だろう。

主要三候補の経済政策に対するスタンスは、アベノミクスを基準にすると“現段階”では整理しやすい。アベノミクスは「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「成長戦略」だった。大胆な金融緩和の核は、インフレ目標2%達成の導入とほぼ等しい。

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