社会・その他

巧妙化するサイバー攻撃 「国益守る」警察庁の狙い

 警察庁が24日、新たにサイバー局を創設し、捜査を担う直轄隊も設置する方針を示した。その背景には、都道府県のみならず国境さえも超えて巧妙化する攻撃などに、国の機関として対処しつつ、諸外国とも連携し、官公庁や企業の機密性の高い情報の流出などを防ぎ、国益を守り抜く体制が必要だとの判断があったとされる。「捜査情報を蓄積して社会に還元し、(企業などの)防御能力向上にも役立てたい」。警察幹部は意気込みを語る。

 枠組みに収まらず

 警察庁は、昭和29年の発足以来、その役割を警察行政に特化し、実際の捜査は都道府県警が担ってきた。だが、昨年発覚した電子マネー決済サービス「ドコモ口座」の不正引き出し事件など、全国的に被害が拡大する事案が発生。警察幹部は「都道府県警の枠組みを超えた捜査が必要になるケースも増えている」と話す。

 国家の関与が疑われる事案も起きている。

 平成28~29年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の組織が狙われたサイバー攻撃では、中国人民解放軍の指揮下にあるハッカー集団の関与が浮上した。

 現行では警察の警備部門が対処する国家を脅かすサイバーテロと、生活安全部門が担う不正送金といった金銭目的の犯罪との線引きが難しい事案もある。

 今年5月にランサムウエア攻撃によって米国の石油パイプラインが約6日間の操業停止に追い込まれた事案は、ロシアのハッカー集団が金銭目的で行った犯行とされている。これにより、米国はガソリン供給不足に陥るなどし、ロシアとの外交問題に発展した。

 さらには、北朝鮮が外貨獲得のために、仮想通貨交換業者へのサイバー攻撃を仕掛けているとの指摘もある。警察幹部は「警備、生安とひとくくりにできないような事案もあり、実は裏で、国家と攻撃組織との間に大きなつながりがあることも想定される。責任ある機関が大局的にみる必要がある」とサイバー局創設の理由を語る。

 諸外国と肩並べる

 今回のサイバー局創設は警察庁が事実上初めて直接捜査を行うという、発足以来の転換点になる。

 実際に容疑者が特定できなくても背景事情を探る必要性のある事案の捜査や、これまでは海外の機関から捜査協力依頼があっても都道府県警に「仲介する」だけだったものを、直接的に行うとされる。一方で警察幹部は「直轄隊が自ら積極的に容疑者逮捕に乗り出すという性質のものではない」とも説明している。

 海外では、米連邦捜査局(FBI)など国の捜査機関が直接捜査し、それらの機関同士の捜査連携も増えており、日本も、ようやく諸外国と肩を並べる体制が整備される。警察幹部は「日々、進化するサイバー事案に、迅速に対応することが求められており、国民の期待に応えたい」と話している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus